リチウムイオン2次電池(LiB)の高容量化に向けた取り組みが活発だ。正極に使われる導電助剤を例にとっても、今期に入り、さまざまな動きが見受けられる。トーヨーカラーは、従来のカーボンブラックに変わるカーボンナノチューブ(CNT)で大手LiBメーカー向けの採用が拡大している。日本ケミコンは、活物質表面をコーティング可能な導電カーボンを開発し、導電助剤への参入を決めた。東レは、CNTに代わる材料としてグラフェンの適用を検討するなど、一つの材料だけをみても開発事例は枚挙にいとまがない。

 電池の高容量化は現状、最重要の開発テーマといえる。とくに注目を集めるのが、新たな材料を用いた電極の誕生だ。数年前は5ボルト以上の電位を持つ正極材が脚光を浴びたが、安全性との兼ね合いから5ボルトに近い材料の採用が有力視されているもよう。マンガンやニッケルといった正極活物質を使いこなしながら、バインダーと導電助剤の削減で活物質の最大化を図るなどの取り組みが行われている。また負極材では、シリコン含有量の増加や金属リチウム負極の実用化が待たれる。

 電池は正極材や負極材、電解液、セパレーターといった材料の組み合わせで性能が決まる。一つの材料が突出した性能であっても、それだけで高容量な電池が完成するわけではない。材料の擦り合わせがカギを握るわけだが、例えばセパレーターのように、活物質増加の対応として基材を薄肉化してきた実績がある。新たな材料の誕生が他の材料の進化につながるため、化学メーカーの電池材料開発に期待は高まるばかりだ。

 ただ電池は何も高容量化がすべてではない。持続可能な社会の実現に向けては性能もさることながら、どれだけ長く使えるかが、この社会的要求を満たすカギを握る。

 この代表的な取り組みが、電気自動車(EV)などに活用したLiBの再利用だ。再生可能エネルギーの蓄電用途などとして利用できれば、太陽光発電の普及拡大につながるほか、特定地域を対象としたエネルギーの自給自足も夢ではなくなる。

 実際にLiBの再利用が可能かどうか、その残存価値を調べ、ライフサイクルを管理し、循環取引を可能にするような取り組みも生まれつつある。来るべきEV社会にあっては、車載用LiBの再利用は前提条件となるはずだ。

 LiB関連メーカーは、2次利用も見越した開発も重視しなければならない。高容量化にしろ急速充電が可能な高出力化にしろ、これからのLiB開発には安全性と長寿命化が開発の土台となる。

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