国際的金融機関の220社が署名し、温室効果ガス排出量の多い企業1600社にSBT(サイエンス・ベースド・ターゲッツ=科学と整合する温暖化ガス削減目標)の設定を求める書簡を送った。BASFや日本製鉄、サムスン、サザン・カンパニー、タタ・スチール、ルフトハンザなどが含まれている。なお、この時点でSBTの認定を取得した金融機関は1社もなかった。これに対して化学セクターは18社。決して取り組みが遅れているわけではない。

 この書簡に署名したのはアリアンツ、アムンディ、キャセイ・フィナンシャル・ホールディングなど26カ国220社の金融機関。日本から富国生命投資顧問、日興アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントなどが名を連ねた。金融機関では10月に入って初めて韓国のKBフィナンシャルグループ、スウェーデンのEQT AB、フランスのバンクポスタルの3社がSBTを取得した。これに対し化学セクターは、すでに18社が取得している。

 SBTは、企業のCO2削減計画がパリ協定に掲げられた「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度Cより十分低く保つとともに、1・5度Cに抑える努力を追求する」との目標達成に合理的に整合した目標を表す。企業が策定した目標に対しCDP、世界資源研究所、世界自然保護基金(WWF)、国連グローバル・コンパクトにより設立された国際的非営利団体のSBTイニシアチブ(SBTi)が認定している。今年7月に1・5度C目標に即した新基準を公表。2020年以前に目標が承認された企業にも、25年までに適合するよう求めている。業種によってSBT取得であることを示す難しさは異なる。SBTi自身、石油ガスセクターについては認定の方法論を確立できていない。

 SBTiは、取得を推進するため先行企業の事例などを参考にしたセクター別ガイダンスの作成を進めている。金融機関向けは今年4月にパイロット版が出たばかり。金融機関の意欲は高く、取得の意思があることを表明した企業は100社近い。今後、取得企業は増えてくるだろう。

 化学セクター向けガイダンスの作成も始まっている。昨年末までに化学企業がSBTを設定する際に直面する特定の課題を洗い出している。アドバイザリーグループにはBASFをはじめエア・リキード、国際エネルギー機関(IEA)、ジョンソン・マッセイ、SABIC、ユニバー・ソリューションズが参加している。化学企業によるSBT取得へ向けた取り組みは、着実に進んでいる。

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