首都圏1都3県の緊急事態宣言が解除された。感染防止に気を配りながら経済を上向かせる行動が求められる。飲食店や観光産業、交通機関など、これまでの落ち込みを挽回したいところだが、コロナワクチン接種がひと通り完了しない限りは一気に元に戻るとは考えにくい。企業も、この間に築いたテレワークなど働き方改革の歩みを止めずに、さらなる危機管理体制の強化に取り組んで欲しい。

 企業の危機管理体制については、東日本大震災の教訓が現在のコロナ禍の対策に大いに生かされている。本紙が主要化学企業を対象に行ったアンケートでは、その内容は「社員の安全確保」が最も多い83%(複数回答可)、次いで「サプライチェーン管理」と「緊急対策設定の迅速化」が、ともに79%(同)だった。東日本大震災から10年が経過し、これらの対策を積み重ねてきた効果があった。

 ただ世界的なパンデミックによる需要の激変、移動制限への対応は経験したことのないケースであり、課題も浮き彫りになった。働き方改革の重要な手段と捉えられていたテレワークは環境が十分に整っておらず、各社は対応を急いだ。皮肉なことにコロナ禍で普及が後押しされた格好だが、一方で製造現場の業務継続に向けたリモート環境の整備は進まず、今後の課題として残る。

 また危機管理は自然災害を想定するケースがほとんどで、多くの企業では感染防止の観点が欠如していた。移動が制限されるなかで海外拠点への対応も各社を悩ませた。
 アンケートでは、ウィズコロナ、アフターコロナに対応した危機管理体制のさらなる強化策について聞いた。その結果「すでに策定し実行に移している」と答えた企業が全体の33%を占めた。「現在、策定作業を進めている」(23%)、「今後策定を予定している」(13%)を含めると約7割の企業がさらなる危機管理体制の強化策を策定、または策定を予定している。

 地震大国の日本では、今もなお東日本大震災の余波が続く。豪雨も毎年のように繰り返し、被害は広範囲に及ぶ。コロナ禍も経験したなかで、既存の対策で対応可能と答える企業は25%を占めた。各社はこれまでの教訓を生かして日々更新し続け、最大限の対策を実行に移しているのだ。

 ただBCP(事業継続計画)を含めてある程度の対策は構築しているものの、環境変化に対応して随時見直していく姿勢をみせる。起こり得ることは“想定外”であることを肝に銘じ、さまざまなリスクを再度検証していく必要がある。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る