中小企業庁が2019年度の下請代金支払遅延等防止法による取り締まり状況など下請取引に関する調査結果をまとめた。違反行為は17年度比35・3%減と、この3年間で着実に減少しているものの446事業所が下請事業者に対する禁止行為(11項目)を行っていた。内訳をみると「支払遅延」(183事業所)が最も多く、次いで「下請代金の減額」(133事業所)や「利益提供要請」「割引困難手形」などとなった。コロナ禍で改めてサプライチェーンの重要性が浮き彫りとなった。国際競争力の源泉でもある健全な産業の裾野を維持するよう、さらなる取り組みが求められる。
 政府は下請取引の適正化に向けて「価格決定方法の適正化」「コスト負担の適正化」「支払条件の改善」「知財・ノウハウの保護」「働き方改革に伴うしわ寄せ防止」の5つの課題を重点に、親事業者が負担すべき費用等を下請事業者に押しつけることがないよう徹底を図っている。19年度は下請取引の実態を把握するため、約5万件の親事業者と、その親事業者と下請取引を行う約24万件の下請事業者に対し書面調査を行った。
 昨年度の違反行為は前年度比8・8%減少。手続き上の義務行為を守らなかった手続き規定違反も9・8%減の1171事業所と改善している。また855社の親事業者へ立ち入り検査などを実施し、706社に対して改善指導を行った。改善指導を受けた親事業者のうち188社に対して総額約1億3800万円を下請事業者に返還するよう指導し、不当な下請代金の返還を実施している。
 過去3年間で違反行為が累積数100事業所以上となる業種でみると、多い順に機械器具卸売業、生産用機械器具製造業、金属製品製造業、道路貨物運送業、情報サービス業、電気機械器具製造業、運送用機械器具製造業、はん用機械器具製造業、建築材料・鉱物・金属材料等卸売業、繊維工業、繊維・衣服等卸売業、プラスチック製品製造業、技術サービス業などとなっている。業種によって差はあるが、支払い遅延や代金減額といった違反の割合が高い。
 また原価低減(買いたたき)、金型(型保管を含む利益提供要請)、手形(長期手形等)に対応した事項では、原価低減は生産用機械器具製造業、金型は電気機械器具製造業および輸送用機械器具製造業、手形は生産用機械器具製造業が最も違反行為が多かった。
 適正化に向け各業界団体も自主行動計画を策定して取り組んでいる。時代が大きく変化するなか、商習慣も変わらなければいけない。

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