化学品商社が開発・製造機能を持つグループ企業や資本関係のない他企業との連携を強めている。新型コロナウイルスの感染拡大によって、国内はもとより海外における新規ビジネスの発掘もままならない状況下、これまで力を注いできた企業間連携をより強めており、昨年末以降、具体的な案件が複数件明らかになっている。

 連携の相手はさまざまで、国内外の老舗企業やベンチャー企業、大学など研究機関との協業も少なくないようだ。これら取り組みによって開発・生産機能の確保や拡充、販売する商材のラインアップ強化、展開している分野および用途の開拓に努めている。また、すでにこういった機能を有している商社にとっては、他企業などとの連携を拡大することで既存の能力を補完し、これまで以上に幅広い事業展開を可能にしている。

 直近では長瀬産業が1月、医療機器開発企業の米カプソビジョン製小腸用カプセル内視鏡の提供開始を明らかにした。消化器内科を対象に販売する。長瀬は医用画像処理に関連するビジネスを強化しており、今回も、その一環。また2021年度央にNAGASEグループの米IFCの技術を応用して開発した高濃度フィラーマスターバッチを発売し、食品包装容器や電線被覆材などの用途へ展開する考えも表明している。

 日曹商事は昨年11月に、神鋼環境ソリューションと金属ナトリウム分散体(SD)の販売提携契約を結んだ。環境負荷低減への寄与を含め、これまでにない広範な市場にSDを提案、新規用途を開拓する。

 KISCOは、グループ企業のプロテクティアが保有する茶カテキン由来の抗ウイルス成分のカテプロテクトが、新型コロナウイルスやヒトβコロナウイルスに対し、99%を超える抗ウイルス活性を示すことを確認した。今回の成果を生かし、コロナウイルス対策の各種製品に技術提案を本格化していく。

 森六ケミカルズでは、グループ企業の四国化工がポリエチレン樹脂を波形に成形したプラスチック段ボール「APTON」の用途展開を強化している。植樹・林業市場に向け、コンテナ苗用のシートとしての提案を促進しており、再生原料の使用に加え生分解性素材の利用も視野に入れている。

 これら化学品商社の取り組みをみると、SDGs(持続可能な開発目標)を重視する企業姿勢を反映してか、環境負荷低減に寄与するテーマが多いのが特徴の一つと言える。今後も、このようなテーマを中心に、連携を広げて新ビジネスを発掘する動きが続きそうだ。

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