企業市民としての責任を全うするために、環境に配慮した事業活動は必要不可欠である。二酸化炭素の排出量を削減したり、廃棄物を原料として活用する多くの企業の取り組みはそうした責任を果たすための好例で、見聞きすることが増えている。一方で、なかなか耳目に触れないこともある。いずれも地道な取り組みだが、長く続いているケースが少なくない。

 理工系を専攻する日本人女性の大学生に、米国人学生との文化交流や共同研究の機会を提供するダウ・ケミカル日本のプログラムは、その一つだ。公益財団法人の米日カウンシル-ジャパンと在日米国大使館が主導する官民パートナーシップである「TOMODACHI イニシアチブ」との活動を通じたもので、女性のリーダーシップ向上に貢献している。

 2014年に始まり、17年からは「TOMODACHI-STEM @ Rice University Program」の主要な支援者として、毎年10人の理系女子大学生が5週間、米国で研修インターンシップに参加するプログラムを支援している。これまで41人が参加した。

 ダウは世界中で「未来のイノベーター創出」をコミュニティー支援の柱の一つに位置づけ、科学・技術・エンジニアリング・数学(STEM)分野における教育支援に取り組んでおり、日本におけるプログラムは、その一環。20年度はコロナ禍を背景に延期になったが、21年度はTOMODACHI イニシアチブが主催する「TOMODACHI-STEM Women’s Leadership and Research Program」という新プログラムへの支援を通じ、理工系を専攻する日本人女性の大学生に、米国人学生との文化交流や共同研究の機会を提供することになった。

 コロナ禍で人と人の交流があらゆる場面で減っている。対面による授業を受けることができない大学生は多い。全国大学生活協同組合連合会が今年7月5~19日に実施したインターネットを通した調査で44・7%が学生生活は「充実していない」と回答しているように、満足のいく日々を過ごすことができない学生は多い。残念ながら、充実していないと答えた学生の割合は昨秋の調査に比べて大幅に増えている。

 ダウが支援するプログラムは、思うに任せぬ生活を強いられる学生に一筋の光をもたらすだろう。定員は限られ、狭き門ではあるが、学生には励みになるだろう。今のような困難な時にこそ、こうした取り組みがさらに広がることを期待したい。

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