最近、パワーアシストスーツが注目を集めている。身体に装着することで動作や姿勢を補助してくれるこのツールは、介護用から始まり、最近では製造・物流現場など活躍する分野が広がっている。人気芸人を起用したテレビCMを流す企業もあるほど。価格についても15万円程度と、個人で入手可能なレベルの商品が登場している。
 矢野経済研究所がまとめによると、パワーアシストスーツの2018年度の国内の市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比13・6%増の14億3700万円だった。ベンチャーから大手まで幅広い企業が参入、業種もさまざまという。「歩行支援型」と「作業支援型」の2タイプがあり、18年度以降、作業支援型が市場全体を牽引する格好となっているそうだ。矢野経済研では将来展望として、とくに作業支援型において低価格化と汎用性が高まり、一般家庭まで含んだ需要開拓が期待できるとしている。これにより22年度の国内市場規模は、18年度の約5倍の71億8000万円になると予測している。
 パワーアシストスーツの利用場面は、大まかにいって高齢者などのリハビリを含む「歩行支援」と、介護や倉庫における作業などの重作業を補助して体の負担を軽減する「作業支援」に分けられる。広範な参入企業のなかで、新たなビジネスチャンスを見出そうとしている企業も多く、そのなかで専門商社の取り組みも活発化している。今後はスーツそのものに加え、これに使用されるパーツ、あるいは新たな技術など、さまざまなかたちで同ビジネスに参入する企業が増えそうだ。
 例えば機械商社の第一実業では、パナソニック子会社のATOUN製パワーアシストスーツ「ATOUN」(アトウン)を扱っている。最新モデル「ATOUN MODEL Y」については、腰部の負担を軽減できるという特徴を生かし、物流や介護、農業などに限定せず、広範な業種・市場を対象に提案していく方針だ。
 また半導体商社のPALTEKは、東京理科大学発のベンチャー企業であるイノフィスが開発したアシストスーツ「マッスルスーツ」の次世代モデルとして、10万円台の低価格化と軽量化を実現した「マッスルスーツ エブリィ」を昨年11月から販売開始した。
 さらに国内のある化学品商社は、自社で開発した新技術を活用できる有望市場の一つとしてパワーアシストスーツを挙げている。同スーツは、さらなる軽量化が求められることから、その技術が有効に生かされる日も近いかもしれない。

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