エンジニアリング市場の不透明感が増している。エンジニアリング協会のまとめによる2019年度の受注高・売上高(速報値)は、ほぼ堅調だったものの、20年度予測については公表を12月に延期した。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなかで、プラント・産業機械各社の視界は不良、経営計画の立てにくい事業環境にある。

 同協会では毎年9月に「エンジニアリング産業の実態動向」(エンジニアリング白書)を発行している。同協会がアンケート調査を実施し、エンジ専業、総合建設、造船重機・鉄鋼・産業機械、電機・通信・計装の4業種にわたる協会会員(62社)についてまとめたものだ。しかし今回、発行を12月に延期する異例の事態となった。

 速報値の19年度受注高は、合計で17兆4133億円(前期比8・6%減)とダウン。うち国内は14兆2933億円(同6・4%減)、海外が3兆1200億円(同17・3%減)だった。18年度は国内で防災関連、五輪関連の投資が多かったが、19年度はこれらがなかった。ただ15年度以降、合計では17兆円前後で推移しており、19年度もほぼ堅調といえそうだ。

 19年度を業種別でみると、エンジ専業は1兆7732億円(前期比45・3%減)と半減した。液化天然ガス(LNG)プラントの大型案件の成約が20年度にずれ込むなどで、海外受注が約8割減ったのが響いた。国内比率が約9割と高い総合建設も9兆2585億円(同8・5%減)にとどまった。

 造船重機・鉄鋼・産業機械は2兆4719億円(同14・8%増)と伸びた。デジタル関連のおう盛な設備投資に支えられ、電機・通信・計装は3兆9097億円(同3・8%増)と増加している。

 19年度のエンジ業界では、新型コロナの問題は、ほぼ3月だけで大きな影響はない。しかし20年度に入って世界規模で感染拡大が続き、各国の入国制限、国内の出張自粛が続く。各社は新規プラントの受注活動が困難となり、受注は非常に厳しくなると予測される。

 各社は感染拡大の防止対策をはじめ、そのための制度設計、デジタルトランスフォーメーション(DX)などIT環境の整備、リモートモニタリングサービスの提供などで影響を最小限にとどめる考え。

 また働き方改革を実行し、ウェブ会議システム、時差出勤など業務効率化を急ピッチで進めている。エンジ業界は従来から業務のデジタル化に積極的だった。想定外の事態が続くなかで各社、いまがチャンスととらえて変革を進めてほしい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る