昨年10月の菅首相による2050年カーボンニュートラル(CN)宣言、さらに今年4月の30年に温室効果ガス排出13年度比46%削減の表明を受け、さまざまな取り組みが始まっている。企業もチャレンジングな目標を掲げるが、実現には、もう一段強力な施策が求められる。

 電通はこのほど、全国の10~70代の1400人を対象に「カーボンニュートラルに関する生活者調査」を実施。CNに関する意識調査に加え、経済産業省が「グリーン成長戦略」で掲げる重点14分野の認識状況、CNに取り組む企業への意識も調査した。

 それによると、CNの言葉の内容まで理解している人が15%にとどまる一方で「取り組みの必要性を感じている」は7割に上った。年代別ではシニア世代(60歳以上)の関心度や関与の意向は高かったが、将来を担うべき若い世代の関心は低かった。

 経産省の重点14分野のうちで「自動車の脱炭素化・蓄電池技術の実現」「資源循環型社会の実現」の2分野は、少ないながらも一定認知されていたが、全体的に認知度は低い傾向にあった。世の中の浸透度をスコア化・グループ分けしたところ、この2分野と「再生可能エネルギーの主力電源化」「CO2分離回収の実現」「都市マネジメント改革」の6分野は、実行動への誘引で話題を大きくできる「トレンド」に分類されたが「水素サプライチェーンの構築」「燃料アンモニアの活用」「革新的原子力技術の実現」「船舶の脱炭素化推進」「航空機の脱炭素化推進」の5分野は、関心もなく、今後関与を高めたいとも思われていない「潜在」に分類された。

 CN実現に取り組む企業・団体を「応援したい」とする回答は7割と高い。「商品・サービスを購入したい・利用したい」「信頼できる」「長期にわたって利用したい」との回答も多い。取り組む企業の情緒的価値は「時代変化に適応している」「チャレンジ精神がある」「長期的な視点で取り組んでいる」「今後の取り組みに期待できる」と評価。機能的価値は「技術力・開発力がある」「自然環境に配慮している」「先進的な事業を行っている」「世の中全体に役立つ技術をうみだす事業を行っている」が高い。

 CNへの挑戦は始まったばかりだが、従来の延長線上の取り組みでは達成が難しい。化学をはじめ製造業には、従来と全く異なる視点に基づく技術の開発や、既成概念にとらわれない新たな発想による取り組みを期待する。われわれも世代を問わず今まで以上にCNに強い関心を持ち、より積極的に関与し、行動していくことが求められる。

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