カーボンニュートラルLNG(CNL)を調達する東京ガスが、供給先である国内14社と組んで「カーボンニュートラルLNGバイヤーズアライアンス」を設立した。CNLを世の中に広く認知させるとともに、投資機関による評価向上や国内各種制度における位置づけの確立を目指して取り組みを推進していく。気候変動を抑制するための産業界の取り組みの重要な一部となる可能性がある。

 CNLは、天然ガスの採掘から燃焼にいたるまでの工程で発生する温室効果ガスをCO2クレジットで相殺し、燃焼させても地球規模ではCO2が発生しないとみなす液化天然ガス(LNG)のこと。CNLの利用者は、オフセットの費用を負担する必要があるが、新たな設備を導入することなく、これまで通りに天然ガスを利用しながら「脱炭素」に近づくことができる。排出量の削減こそ取り組むべきだが、自助努力に限界のある排出者があるのも現実だ。

 LNG貿易は成長を遂げており、2040年までに倍増するともいわれている。化石燃料のうち最もCO2排出量が少ないとはいえ、このままでは50年にカーボンニュートラルを達成できないのは明らか。CNLは、この課題への解となり得る。

 各国企業で構成するLNG輸入者国際グループ(GIIGNL)は昨秋、LNGのカーボンオフセットに関するリポートを公表。「CNL取引はLNG価格の水準にかかわらず、より頻繁に行われるようになると考えられる」との見通しを示した。

 課題は、LNGのサプライチェーン全体の排出量を把握する標準的な手法が確立していないこと。いくつかの第三者認証が存在するが、決定打とはなっていない。とくに欧州が懐疑的でGIIGNLは「LNGがバックアップ電源となることで再生可能エネルギー発電を支えるというストーリーは受け入れられず、欧州の政策立案者はLNGサプライチェーンからの温室効果ガスの排出量に透明性を求めている」と指摘している。

 アジアではCNLが広がり始めている。東京ガスは、19年に世界で初めてのCNLをシェルが販売した時に、韓国のGSエナジーとともに買い手となった。シェルではその後、台湾へも市場を広げた。シェル以外にも、JERAがADNOCから調達したLNGをCNLにしてインドに供給。トタルは中国海洋石油集団に販売した。

 アジア以外では今月、シェルが初めて英国で販売を始めた。制度の整備が進み、国際的な市民権を得ることに期待したい。脱炭素化への選択肢は多いほどよいのだから。

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