好調に推移しているプラスチック加工機械の市場に、新型コロナウイルスの感染拡大が影を落としている。射出成形機を中心としたプラ加工機械は、2021年に入って高水準の生産を続けていたが、コロナ再拡大などが直撃。大口ユーザーの自動車業界の減産、部品供給の停止などが響き、年後半に向け成長率が鈍化する雲行きにある。

 日本プラスチック機械工業会によると、21年上半期(1~6月)のプラ加工機械の生産は合計7717台(前年同期比39・5%増)と4割近い伸びをみせた。昨年は米中貿易摩擦などが響いて、需要低迷で苦戦した。ただ米政権が代わり、昨年末から受注が急増。今年はメーカー各社でフル生産の活況が続く。

 各社の業績も順調に回復している。射出成形機の専業大手である日精樹脂工業の4~6月期業績をみると、射出成形機の売上高は86億7600万円(同41・7%増)と快走した。

 住友重機械工業の4~6月期も、プラ加工機械などインダストリーマシナリー部門の売上高は494億円(同14%増)の2ケタアップ。ファナックの電動射出成形機などロボマシン部門は売上高532億円(同2・8倍)だった。芝浦機械の射出成形機やダイカストマシンなど成形機事業は、売上高が176億2600万円(同36・2%増)と大幅に増加している。

 しかし足元では、コロナの再拡大への懸念や半導体などの主要部品が不足しており、自動車メーカーが各工場での減産を発表すると、暗雲が立ちこめてきた。とくに車部品メーカーの東南アジア拠点などが、感染拡大で工場閉鎖など厳しい対応を迫られると、結果的に射出成形機の需要を直撃してしまう。

 現在、プラ加工機械の生産そのものは好調だが、各社の担当者によると「受注ベースでみると年初の勢いはない」をこぼす。今のところ今年下半期は、上半期に比べ、ややペースダウンするとみる向きが多く、大幅なダウンは避けられそうだ。

 今後、半導体不足については半導体メーカーの投資計画が公表されれば、ある程度のめどは立ちそうだ。これに対しコロナの収束については、今のところ誰にも予測できない。機械メーカーとしては、正確な生産計画が描けない状態が続く。

 しかし射出成形機は、幅広いユーザー業界を持つことが強み。電気自動車(EV)関連の製品開発や、自動車業界以外での受注活動に力を注ぐなど、多様な顧客ニーズに、きめ細かい対応を実施することにより、今回の難局を乗り切って欲しい。

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