日本自動車工業会が、新型コロナウイルス危機下における自動車関連企業の資金調達を支援する「助け合いプログラム」を発足させた。4月10日に行った自動車4団体(自工会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会)の会見で豊田章男自工会会長が言及した「自動車業界が持つ目利きの力を使って、未来に向けて絶対に失ってはいけない要素技術や人財と資本をマッチングさせていく互助的な取り組み」を具現化したもので、自動車業界初となる。

 世界的に新型コロナウイルス感染が広がる状況の下、自動車産業は都市封鎖や外出禁止令など各国政府の対応措置により、各市場において新車販売の減少や生産停止といった多大な影響を受けている。また感染が収束した市場でも第2波、第3波が懸念され、インパクトはリーマンショックを上回る。

 構成部品が3万点にも及ぶ自動車は完成車メーカーを頂点に幅広い産業で構成され、一つひとつの要素技術と高い技能を有した人財が、わが国自動車産業のグローバル市場における優位性を支えている。今回の支援プログラムは、競争力の源泉である技術・技能・人財を維持・確保するのが目的。支援先選定には、業界で蓄積した知見をベースとする「目利き」力を最大限に活用していく考えだ。

 具体的には、自工会が主体となり金融機関への預金を担保に信用保証を行うことで、自動車関連企業が取引銀行から迅速に融資を受けられるようにする。使途は新型コロナウイルスの影響による運転資金で、保証限度額は原則1億円、保証期間・返済方法は1年間の一括返済。当面、対象は4団体の会員とするが、非会員の自動車関連企業への拡大も検討していく方針だ。自動車産業や日本のモノづくりにとって不可欠と考えられる開発/生産/製造の技術や商品の保有状況などを考慮して決定するという。

 合同会見ではファンド的なものを示唆していたが7月以降、自動車生産の回復を背景とした生産立ち上げ準備などの運転資金需要の高まりが予想されることから、迅速に支援が開始できる信用保証制度を採用した。供給先が特定される部品などの企業については、すでに各完成車メーカーで支援体制の整備が進んでいるほか、窓口となる各団体では政府支援への橋渡しも行う方針。そのため実際に支援を受けるのはティア3以降の独立系が主となる見込み。スピードを優先し、事業規模も20億円とした。ポストコロナを見据えた企業・業界の枠組みを越えた新たな挑戦に期待したい。

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