新型コロナウイルスは、さまざまな制限を課し、多くの不便を強いており、われわれの働き方や生活にも大きな影響が出ている。今後事態がある程度収束したとしても、1月以前とまったく同じ状況に戻るとは考えにくい。しかし、これは、より進化したかたちで仕事をする大きなチャンスでもあり、新たな市場の立ち上がりも期待される。

 現在の状況を、後々振り返ると「ビフォーコロナ」と「アフターコロナ」での変化が論じられることだろう。

 アフターコロナの時代は、急速なテレワークの導入を経て、われわれの働き方も大きく変わる。これまで多くの人が集まり仕事するための空間だったオフィスを保有すること自体に厳しい目が向けられる。本社ビルの規模は縮小しつつ、在宅勤務の環境をより充実させたり、社会的距離が保たれた環境を整備したサテライトオフィスを設置したりする企業が増えるだろう。本社を置かず、100%リモートワークで事業を行う企業が増えることも考えられる。

 仕事上のコミュニケーションの概念も変わる。リアルに人と人が対面して話すことが少なくなる半面、それ自体の貴重さや重要性が増す。基本的なコミュニケーションはウェブ会議やウェビナーなどオンラインで行われるようになり、その頻度は増大していくことになる。今春商用サービスが始まった5G(第5世代通信)の普及がこれを後押しし、オンラインでのコミュニケーションは、さらに臨場感を増し、よりリアルな体験に近づいてくる。

 VR/AR/MR(仮想/拡張/複合現実)技術は一段進化する。AI(人工知能)とあいまって高度化し、自分自身の分身であるアバター同士でやり取りや会議の機会も増えてくる。仮想空間に作られたオフィスにアバターが出社して仕事することも普通になる。

 成長市場のキーワードとして「遠隔・非接触」が加わり、新たなビジネスが立ち上がるだろう。IoT(モノのインターネット)やロボットを使った遠隔での監視や機器・設備の操作、自動化のニーズが高まる。どうしても人が手を触れて行う操作は最小限にとどめることなどが求められ、設備・機器のデザインそのものや使われる素材も大幅に見直す必要がある。

 結果的にこれまで海外諸国に比べ遅れが指摘されていた日本のデジタル化が急速に進み、日本の労働生産性が大幅に改善すると予想されている。今からアフターコロナを見据え、自分自身の働き方や仕事のやり方を進化させ、新たな時代に立ち向かっていこう。

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