経済同友会が先ごろ発表した「2021年3月(第136回)景気定点観測アンケート調査結果」をみると、景気回復に対する期待感が窺える。

 現状の景気判断指数はやや低下(▲6・4↓▲7・7)したが、今後の見通しは現状から大幅に上昇(▲7・7↓33・9)となった。「個人消費の増加」「生産・販売の増加」の回答割合がそれぞれ上昇したためだ。売上高、経常利益の各指数は引き続きマイナス圏内にはあるがいずれも前回より上昇となり、来期は大幅なプラス予想となった。設備投資指数は3期連続でマイナスだったが、今期はプラスに転じた。雇用判断指数はマイナス幅がやや縮小した。9月末の日経平均株価は3万円台を予想する回答が30・8%と最も多かった。ワクチン接種が本格的に始まれば景気回復に一段と期待が持てそうだ。今までの我慢が、ようやく実りつつあるといった感じだろうか。

 この調査は経済同友会が年4回実施している。今回のトピックスは「コロナ禍の1年による企業経営の変化」。定着した変化、あまり定着しない変化、出勤者数削減の対応について質問した。

 コロナ禍の1年で定着した変化・定着しつつある変化は「リモート可能な業務の拡大」「感染拡大防止策の徹底」「デジタル化の推進」の順となった。オンラインミーティング、リモートワーク(在宅勤務)の定着がみられる。出張旅費・交際費の削減、事業所スペース見直しなどコスト削減もあった。

 一方で、あまり定着しない変化や、今でも難しい対応も少なからずある。(1)工事現場、生産現場、交通機関、陸運といった業種や、新規開拓営業、生産、研究、人材採用といった業務の特性によるもの(2)チームワークによる協力、人材育成など有効性・効率性によるもの(3)押印業務、各種帳票保管、在宅勤務者の労務管理など管理・手続きに関するもの-があった。

 出勤者数の削減は業種によって異なる結果となった。「要請を真摯に受け止めつつも会社運営が可能な範囲での対応」(ガラス・土石製品など)、「出勤者が約8割減の状態が続いている」(医薬品など)といった回答がある一方で「テレワークが不可に近い業務」(水産・農林など)、「一律の要請では対応にバラつきが生じる」(化学など)といった声もあった。

 最近、東京ビッグサイトを訪れたらかなりの人出だった。リモートでは雑談がしにくいが、雑談の中に商売の種が潜んでいるという経営者もいる。定着するもの・しないものの選別にはもう少し時間がかかりそうだ。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る