人生100年時代といわれるなか、機能性食品素材への注目が一段と高まっている。とりわけ、お腹に良いというイメージが定着している乳酸菌は、新型コロナウイルス感染拡大で健康意識が高まったことも背景に需要が拡大。特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の関与成分としては、最大規模の販売高を有する市場を築く。物価高にともなう消費の低迷など事業環境には不透明感も漂うが、関連各社は中長期の競争力を見据え、成長につながる投資を続けるべきだ。

 乳酸菌は、炭水化物などの糖を発酵させて乳酸を大量に作り出す微生物の総称。ヨーグルトや飲料、サプリメントのほか、パンや菓子などさまざまな加工食品に活用の場は広がっている。機能性においては、整腸・便通改善をはじめ近年は睡眠改善、抗ストレス、中性脂肪や血中コレステロール値の低下といった働きでも知られる。

 伊藤忠グループでインターネット調査を手がけるマイボイスコム(東京都千代田区)が、2021年9月に10~70代の男女1万111人から回答を得たアンケートによれば健康のために摂取を心がけている成分について、ビタミンC(21・6%)やカルシウム(20・1%)、たんぱく質(19・9%)などを抑えて、乳酸菌(22・5%)が首位。健康に寄与する認知度の高さを示す結果となった。

 他方、関連企業では、とくに話題なのが20年に初めて免疫機能維持の効果が認められたキリンホールディングスの「プラズマ乳酸菌」だ。21年は同乳酸菌入り飲料の売上高を上方修正するなど好調が続いている。大型投資を実施し、23年には生産能力を引き上げる計画を立てている。

 育児用品の大手メーカーとして知られるコンビ(東京都台東区)は、事業多角化の一環として参入したライフサイエンス事業で、主力素材と位置づける殺菌乳酸菌「EC-12」が販売開始から20年の節目を迎えた。数々の試験データに加え、直近では口臭に対する効果を確認するなど顧客からの引き合いは強い。

 1グラム当たり約4兆個まで濃縮した加熱殺菌乳酸菌「FK-23」を扱うニチニチ製薬(三重県伊賀市)は、自社製品での素材活用には限界があると判断。他社への菌体販売やOEM(相手先ブランドによる生産)の受注拡大に力を入れる方針を示す。

 ほかにも市場には多くの乳酸菌原料が流通し、需要を巡る争奪戦は激しさを増すばかりだ。各社には独自のストーリー性や差別化できる切り口といった提案を通じ、さらなる市場の進展を実現してもらいたい。

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