少子高齢化による労働人口の減少や2020年以降の新型コロナウイルスの感染拡大を背景として、ロボットによる作業の代替需要が増加している。ロボットが行う仕事の内容はさまざまだが、近年注目を集めているのが除菌や消毒に関する作業だ。

 矢野経済研究所の調査によると、21年度の除菌・消毒ロボットの市場規模はメーカー出荷金額ベースで約4億9900万円。規模としては、いまだ小さいとしている。これらロボットの価格は1000万円以上の高価格品と400万~500万円の中価格品、200万円前後の低価格品に分類でき、どの価格帯のロボットもLiDAR(光検出と距離)とSLAM(自己位置推定と環境地図作成)技術による自律走行機能を有する。紫外線照射式の除菌/消毒ロボットは深紫外線による殺菌作用を、また薬剤噴霧式は使用する消毒液による殺菌作用を持っている。

 矢野経済は将来、人手のいらない除菌手段として同ロボットの導入が期待できるとしている。ただ、その普及には人体に無害で除菌効果が確認できるのが前提。各ユーザーニーズに対し、製品価格と使い勝手が妥当であることが必須と締めくくっている。

 本格普及はこれからという状況だが、実際に各現場で稼働しているロボットも少なくない。例えばエレクトロニクス商社の丸文が展開している「アイオロス・ロボット」はここ数年、介護施設での採用が増加している。3Dビジョンと2本のアーム、紫外線ライトを埋め込んだグリッパーを使用、紫外線を至近距離から照射して局所的な除菌を行う。箱形の紫外線ライトを持たせると広範囲の除菌も可能。巡視機能では、自律歩行とアームによりエレベーターに乗り各居室のスライドドアを開閉、3Dビジョンで入居者のベッドでの就寝、離床、転倒を検知する。

 またZMPの無人警備・消毒ロボット「PATORO」(パトロ)も注目を集めそうだ。ステレオカメラと3D―LiDARを活用して自律走行するロボットで、電動噴霧器を搭載したモデルも投入している。自己位置の認証機能やカメラなどのセンサー情報を組み合わせて適切な場所で消毒液を噴霧し、手すりやエレベーターのボタンなど手の触れることの多い設備やスーパー、病院などの屋内の巡回消毒を無人で行える。

 コロナ禍のなか、現時点では消毒・除菌といった機能が注目されているが、今後はAI(人工知能)の活用により運搬や介護、コミュニケーションなどといった、より幅広い作業を行うロボットの普及が期待される。

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