日本が誇る先端技術や素材を社会実装するために結成されたコンソーシアムが、会員企業のさらなる連携強化を重要課題に挙げている。単なる寄り合い所帯ではなく、互いの知見を可能な限りオープンにして協業し、価値創出やブレークスルーを狙うものだ。こうした理念は、どのコンソーシアムも掲げるが、実効性を持たせるのは容易ではない。営利企業である以上、自社の利益優先は宿命。だが閉鎖的になっては社会実装にブレーキがかかるのも事実である。

 「フレキシブル3次元実装コンソーシアム」も、こうした壁を乗り越えて、新しいオープンイノベーションを起こそうとしている。3次元実装は微細化、高集積化、省電力化、高速処理を実現する新しい半導体製造技術。パワー半導体を使う次世代デバイスのキーテクノロジーとして注目されている。参画企業は川上から川下まで多岐にわたる。実は前身のコンソも同様の構成だったが、競争意識を捨て切れず、表面的な情報交換に終始したという。

 衣を替えても競争意識がなくなるわけではない。しかし取りまとめ役の大阪大学や基幹企業では同じ轍を踏むまいと足並みを揃える。接合や基板材料などの素材は参画企業により得手不得手あるが、樹脂メーカーと無機フィラーメーカーが歩み寄れば新たな複合材料を開発できる可能性は高まる。川下の自動車部品メーカーも、素材メーカーとの“協演”により、現行技術が抱えるトレードオフを解消できるのではと期待する。

 「ナノセルロースジャパン」(NCJ)も企業間連携を最重要課題に据える。新素材であるセルロースナノファイバー(CNF)の実用化を目指すこともあって、前身のコンソではアカデミアを中心とする研究成果の普及、素材の認知度向上に大きな役割を果たしたものの、事業化に関する連携は希薄だったという。このためNCJでは、本当の意味での事業化加速を狙いに、会員が効率的に情報収集できるようホームページ上にライブラリーを構築。8研究機関、26件のトピックスを公開するという。2013年以降の会員企業のプレスリリースを一覧化、サンプル28種の提供体制も整え共同開発の呼び水とする。

 海外勢も3D実装やCNFに商機を見いだしており、CNFでは中国の特許件数が急増していると聞く。両コンソが国際標準化を重視するのも、日本の国際競争力を確保しなければという危機感の表れだろう。日本主導の市場形成に向けて全体の利益を確保し、その後に個社が利益を得るというパラダイムシフトの具現化を期待したい。

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