エンジニアリングプラスチック、合成ゴムなどの自動車関連素材で環境対応の動きが活発だ。横浜市で先月、3年ぶりにリアル開催された「人とくるまのテクノロジー展」では、化学・素材メーカーが環境負荷低減を切り口に素材の提案を競った。コロナ禍や主要国のカーボンニュートラル宣言を経て、自動車のサプライチェーンで環境対応は不可分と再認識させられた。

 素材における環境対応は、植物や廃棄物由来などサステナブルな原料への切り替え、使用ずみ素材のリサイクル技術やリサイクル網の確立、温室効果ガス排出量の「見える化」などに大別される。

 原材料の調達から製造、廃棄にいたる全過程のCO2排出量を示すカーボンフットプリント(CFP)では、住友化学が独自開発の自動計算ツールを使い自社の全製品約2万品目を評価、外部企業へ無償提供も始めた。帝人も炭素繊維でCO2排出量を見える化する仕組みを構築。旭化成は機能性樹脂や合成ゴムでCFPの算出を始めた。海外勢では、独BASFが昨年末までに自社の全製品約4万5000品目のCFPを算出、データ提供を始めている。

 CFPの算出手法は各社でやや異なり今後、評価方法の標準化、ブロックチェーンなどのデジタル技術の活用による透明性確保などが課題となるだろう。某化学企業の担当者は「いずれ自動車関連素材の選定基準に、耐熱性や強度などと同様にCFPが入ってくる」と話す。CFPが将来の競争力を左右するとみて、自社の実力の把握や工場のCO2排出量削減の取り組みに活用しているという。

 化石由来原料からサステナブルな原料への切り替えは、化学・素材業界を挙げての取り組みへ広がってきた。三井化学が昨年、国内で初めて廃植物油由来のバイオマスナフサを原料に使ったプラスチックの製造に乗り出したほか、エンプラや合成ゴムでもサステナ素材を提供する動きが相次ぐ。原料確保や従来品に比べ高くつくなどの課題はあるが「検討のテーブルに載せたいと考える自動車関連企業は多い」(国内化学企業)。

 一方、使う側の自動車関連企業は別の視点も持つ。植物由来素材のセルロースナノファイバー(CNF)を活用した自動車部品の設計に携わったメーカーの担当者は「素材側は『チャンピオンデータ』をアピールしがちだが、最初から長所と短所を把握したうえで使いこなす方法を一緒に検討したい」と話す。ブラックボックスである素材のデータをどこまで開示するか難しい部分もあるが、胸襟を開く勇気がサステナ素材の勝負を分ける可能性もある。

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