国土交通省が、今年度内に発売予定のホンダ「レジェンド」をレベル3の自動運行装置を備えた車両として型式指定した。レベル3とは、一定の条件下でシステムが周辺の交通状況を監視するとともに運転操作を代行するもの。ドライバーの運転を支援するレベル2と一線を画す。これを機に、さらなる技術開発と、法制度をはじめとした環境整備の進展を期待したい。

 政府では「官民ITS構想・ロードマップ」で、高速道路の自動運転車(レベル3)の市場化目標を2020年めどとしている。国土交通省は、昨年5月に国が定める保安基準の対象装置に「自動運行装置」を追加するなど、道路運送車両法を一部改正。今年3月には国連の自動車基準世界調和フォーラム(WP29)の議論を踏まえつつ、世界に先駆け「自動運行装置」の基準を策定・施行するなど早期導入に向け取り組んできた。

 レベル3認定の車両に搭載される自動運行装置(トラフィック・ジャム・パイロット)は、カメラ、レーダー、ライダーといった外部認識装置と、高精度地図および全球測位衛星システム(GNSS)の自車位置認識機能を備えるとともに、ドライバーモニタリングカメラによるドライバー状態の検知、電源系統やステアリング・ブレーキ機能の冗長性を確保する。使用可能な道路は、急カーブやサービスエリア・パーキングエリア、料金所など、車線と対向車線が中央分離帯などにより構造上分離されていない区間を除く高速自動車国道、都市高速道路などの自動車専用道路。また速度については自動運行装置の作動開始前は約30キロメートル/時未満、作動開始後は約50キロメートル/時以下であると規定されている。

 さらに強い雨や降雪による悪天候、視界不良となる濃霧や日差しの強い日の逆光といった気象条件で使用できないほか、渋滞または渋滞に近い混雑といった交通状況が使用条件として付く。かなり厳しい設定で、一般的な自動運転のイメージからほど遠い印象は免れない。一方で東京海上日動火災保険が、レベル3以上の自動運転機能を使用した運転中の事故をノーカウント事故の対象範囲に追加すると発表するなど、受け入れ側の具体的対応を誘引している。

 自動運転の高度化は、商品化およびそのフィードバックを通じてシステムの高精度化・信頼性向上および走行環境条件の緩和が進展し、それに付随するかたちで一般消費者の理解や社会制度の整備が進むことが想定される。今回の型式指定は、世界に先駆けたシステム監視によるレベル3以上の自動運転実用化への第一歩となる。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る