阪神・播磨の二大工業地帯を中心にわが国有数の工業県として発展を果たしてきた兵庫県。世界的に高い技術力を有する基幹産業とともに、播磨科学公園都市や神戸医療産業都市といった先駆的なプロジェクトを軸に最先端の科学技術基盤が集積する。こうした特色を生かして県や神戸市は産学連携の推進、知的財産の活用・技術移転、ベンチャー・スタートアップ企業の支援・誘致など、さまざまな産業振興策を打ち出しつつ、県内企業のさらなる成長・発展を後押ししている。

 兵庫には世界各地との交通アクセスや物流インフラを背景に鉄鋼、化学、食品、機械、電機など多様な製造業が進出している。さらに世界有数の大型放射光施設「SPring-8」、スーパーコンピューター「京」の後継機である「富岳」プロジェクトを実行する理化学研究所計算科学研究センターなど、世界有数の研究機関や国際水準の大学が数多く存在し、県内のモノづくり産業を支えている。

 しかし少子高齢化や若年層流出が深刻な社会問題となっているのに加えて、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症拡大が県内の経済活動に影を落としている。地域産業・企業活性による持続的な経済成長の実現が大きな課題となるなか、近年、県や神戸が力を注いでいるのがスタートアップ企業の誘致や創業支援だ。すでに兵庫・神戸では国際的に注目される起業家支援プログラム「500 KOBE ACCELERATOR」や、スタートアップと行政が協働する官民一体型新ビジネス創出事業「Urban Innovation KOBE」といった起業家育成に向けた施策が充実している。

 こうした先進的な取り組みが評価され昨年、国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)の「グローバル・イノベーション・センター・ジャパン」(GIC Japan)が神戸に開設された。GIC Japanは国内外のスタートアップが集積し、持続可能な開発目標(SDGs)の課題解決に向けた、新たな製品やサービスの創出を目的としたインキュベーション施設となる。加えて起業に興味ある人、起業したばかりの人を支援するための拠点「起業プラザひょうご」が神戸三宮旧居留地でリニューアルオープンした。起業の際のオフィススペースとしてだけでなく、専門家によるアドバイスやセミナー、起業家同士の交流の場など新たなイノベーション拠点として注目されている。世界に通用するスタートアップが集積しており、地域経済の活性化や新たな雇用の創出が期待される。

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