セラニーズは三菱ガス化学との間で、ポリアセタール(POM)を中心とするエンジニアリングプラスチックスの製造販売事業を手がける合弁会社の韓国エンジニアリングプラスチックス(KEP)の運営体制を見直すことで基本合意した。これによりセラニーズの成長戦略は新たなステージに向かう。

 KEPはセラニーズが50%、三菱ガス化学が40%、三菱商事が10%出資する合弁会社。三菱ガス化学は発表文で「KEPは1987年の創業以来、韓国内でのプレゼンスを確立しながら販売地域は全世界に広がり、自動車、医療、電気、機械等の広い分野への展開に成功しております」と記し、着実に地歩を固めてきたことを強調した。

 KEPの年産能力は14万トン。新たな運営体制で製造会社になり、セラニーズと三菱ガス化学は出資比率に応じて製品を引き取って販売することになる。セラニーズがホームページに載せた三菱ガス化学との共同発表文では、顧客に対する長期的な供給安定性を高めるために生産能力を増強することを表明している。数年の間に複数のステップで具体化する意向で、KEPの製造機能をさらに強固にする姿勢を示したものだ。

 今回の基本合意によって、セラニーズは韓国にPOMの供給拠点を確保し、能力を増強すれば引取量をさらに増やすことができる。このため運営体制の見直しは、エンプラを軸にするセラニーズのエンジニアード・マテリアルズ事業の今後の成長に向けた、極めて重要なステップになると判断できる。

 同社はポリプラスチックスの持株を売却している。64年にダイセルとの合弁会社として発足したポリプラスチックスは、アジア市場参入の足掛かりになったものの、45%の出資では経営判断に十分関与できない。その点がジレンマにもなっていたようだ。持株を手放したことで、合弁会社であり、同時に競争相手であったポリプラスチックスのポジションが明確になったと思われる。さらに、これによってアジア地域での事業拡大に懸けるセラニーズの強い意志を示したといえる。

 KEPの運営体制の見直しはこれに続くもの。セラニーズと三菱ガス化学は共同発表文で、運営体制見直しは2021年末までに終えることを見込むと表明している。最大で1年余りの間に、両社ともに新たな体制を将来の成長の礎にするための準備をすることだろう。また運営体制が変わった後、KEPの顧客に対し、いかに安定供給を続けていくかもポイントとなる。その際には何よりも顧客第一主義に徹することが肝要だ。

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