ダイセルが変革に向けて矢継ぎ早に動いている。7月1日付でグループ3社を統合し「ダイセルミライズ」を発足。同20日にはポリプラスチックスを完全子会社化することで合弁相手のセラニーズと契約を結んだ。目指すところは、新長期ビジョン・中期戦略で打ち出した「成長&加速戦略」の最終段階に当たる新企業集団の実現だ。

 とくに昨年6月、小河義美社長が就任して以降動きは速い。マーケットイン型への転換を図るため組織を大幅に刷新。昨年10月にコーポレート機能を強化したのに続いて、今年4月には「戦略ビジネスユニット」(SBU)による事業体制に移行した。ダイセルファインケム、ダイセルポリマー、ダイセルバリューコーティングの販売・開発部門を統合したダイセルミライズの設立も、この一環だ。

 これらに続くのがLCP(液晶ポリマー)やポリアセタール(POM)で世界トップシェアのポリプラ完全子会社化だ。制約があった欧米市場展開を本格化できるなどシナジー効果は大きい。株式取得に約1685億円を投じる姿勢から長年の懸案に対する思いが伝わる。

 ダイセルが目指す成長&加速戦略には3段階のオペレーション(OP)がある。既存事業の構造改革や新事業の育成強化などに取り組む「原ダイセル(OP-Ⅰ)」、既存事業の周辺領域でM&A(合併・買収)や提携による領域拡大「新ダイセル(OP-Ⅱ)」、そして最終段階が、垂直統合型のサプライチェーンに水平方向の統合を視野に入れたクロスバリューチェーンの実現「新企業集団(OP-Ⅲ)」だ。

 クロスバリューチェーンでは市場に対し個々ではなく、グループ企業または同業他社なども含め垂直・水平連携を図り、企業集団として競争力を高める。それには複数事業を自在に組み合わせた仮想企業「バーチャルカンパニー」の形成、価値提供型へのシフトといった戦略と一体的に進める必要がある。

 ポリプラ完全子会社化はOP-IとOP-Ⅱにおける最重要課題の一つであり「OP-Ⅲへの突破口」(小河社長)。SBUに権限を委譲し、市場・顧客に迅速対応できる体制を求める先には、ホールディングス(HD)制も視野に入れる。

 この間の取り組みが目指すところは、小河社長が繰り返し発信してきた「スピード&シンプル」「課題発掘型企業」というキーワードと重なる。同社には豊富なソリューションビジネスのモデルや無機・有機の複合化技術など欲しいものは、まだある。そこを補いながら将来を見据える次の一手に注目したい。

記事・取材テーマに対するご意見はこちら

PDF版のご案内

社説の最新記事もっと見る