総合電機がデジタル化に大きく舵を切り、新たな成長へ取り組みを加速している。日立製作所はデジタルプラットフォーム「Lumada」(ルマーダ)を中心にデジタル事業の拡大を急いでおり、2022年3月期に売上高1兆4000億円を目指す。さらにM&Aなどを含め中計目標の1兆6000億円を狙う。経営再建中の東芝は「東芝Nextプラン」のフェーズ2で、インフラサービスカンパニーへの転換を打ち出している。

 日立はルマーダ事業の構成を「コア事業」と「関連事業」に再定義した。20年3月期の売上高はコア事業5930億円、関連事業4440億円の計1兆370億円。旧定義(1兆2210億円)に比べ目減りするが、ルマーダとOT(運用技術)やプロダクトのかかわりを明確化した。コア事業は、顧客との協創を通じて積み上げた1000件以上のユースケースを中心にデジタルソリューションを拡大。グループ全体にかかわる関連事業はシステム構築にとどまらず、デジタルソリューションと各部門の製品やサービスを連携し、デジタルで変革していく。

 東原敏昭社長兼CEOは「リモート」「非接触」「自働化」をキーワードに、協創とデジタル技術で新型コロナウイルスの課題を解決し、コロナを前提としつつも社会イノベーション事業で成長する考えを示した。

 東芝はフェーズ1の目標をコロナの影響を除き達成。フェーズ2に移行し、成長へ道筋をつける。22年3月期から新たに機能別の事業セグメントを導入。デバイス・プロダクト(技術で差別化するハード・ソフト)、インフラシステム(各種インフラの初期構築)、インフラサービス(長期の保守・更新・運用受託)、データサービス(データを活用した新付加価値創造)の4分類とした。

 インフラサービスは「あまり競合が多くなく、参入障壁も高い分野。市場を獲得して利益率を上げていく」(車谷暢昭社長兼CEO)。CPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業を目指す同社は、次のステップでCPSを最大限活用し、インフラサービスカンパニーとしての成長を描く。これをデバイス・プロダクトとインフラシステムが支える格好だ。

 一方、データサービスは数年後の中核と位置づけ、運転・保守(O&M)サービスや人々の活動などをベースに価値創出を図る。将来は4つのセグメントが相互に連携してシナジーを創出、競争力を高めていく。

 デジタルを武器に大きく姿を変える日立と東芝。さまざまな社会課題の解決に多大な貢献を果たすことを期待したい。

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