日本の大学でAI(人工知能)やビッグデータを活用、それを的確に分析し、研究開発や対象とするテーマ全体のマネジメント能力を養成する「データサイエンス」学部・学科を開設する動きが相次いでいる。データサイエンス研究科を2019年4月に設立(データサイエンス学科は17年開設)した滋賀大学を皮切りに、立正大学も21年4月にデータサイエンス学部を設けた。同月に中央大学、鈴鹿医療科学大学なども同学部を置いた。DX(デジタルトランスフォーメーション)やMI(マテリアルインフォマティクス)を、次世代技術・産業へ応用を目指す国や企業などの動きを受け、大学もデータサイエンス人材の系統的な育成に力を入れ始めた。

 欧米諸国や、科学技術系大学で世界トップレベルの力を付けてきた中国、東南アジア随一の教育水準があるシンガポールなどと比べ、わが国の大学はデータ分析やデータサイエンス系の教育で後れをとっていると言われてきた。膨大なデータの統計や分析・解析が行える人材のみならず、分析から導かれる結果を通じてパターン化や的確なカテゴライズができる人材、さらに一歩進んで、その結果から技術や市場、事象の予測・想定ができる人材を今、産業界や企業サイドは喉から手が出るほど欲しがっている。

 またデータサイエンスは、産業界が抱えているカーボンニュートラルなど環境課題の解決や、工業用を含むデザイン、住宅・ビル・都市などの設計、医療製品・バイオ・医薬品の開発、またはスポーツ分野など、多様な領域で先進的技術・システムを社会実装するためのカギと言われる。世界の後塵を拝してきたわが国の大学側が持つ危機感と併せ、国や政府レベルで本格化するDXやAI活用の国家プロジェクトが後押しするかたちとなり、広い意味で連動し始めたと言えるだろう。

 医療分野のデータサイエンティスト人材教育を目指し、医療健康データサイエンス学科を設けた鈴鹿医療科学大学は「医療や福祉分野でのさまざまなデータを解析分析し、これを医療分野で応用できる人材の育成を目指す」と表明している。立正大学も「データサイエンスは各種の膨大なデータの分析を土台に、新たな発想のやり方や方策などを創造する。理系の学問と同時にデータ解析結果の活用を想定する文理融合の人材教育」と説明する。

 日本の各大学でのデータサイエンス人材育成の動きは、これからの国家間競争を左右する重要なテーマといっても過言ではない。政府行政の深い理解と手厚いバックアップを望みたい。

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