日本自動車工業会が組織体制の変革に乗り出す。自動車産業は「CASE」など新たな潮流を受けて100年に1度の変革期を迎えており「未来に対する回答がないなかでも『日本の自動車産業が正解だった』と持っていく」(豊田章男会長)ため、きょう1日付で抜本的な組織再編を行う。常任委員会を含め12あった委員会を5つにまとめ、スピードと密なコミュニケーションを可能とする体制に移行。次世代モビリティはもとより、今回のコロナ禍でそのあり方が問われたサプライチェーンを委員会として常設化し、市場環境の変化に対応することで業界団体としての存在意義を高める。

 日本は乗用車、軽自動車、二輪車合計で12のメーカーが存在する世界でも類をみない自動車産業を構築している。自動車関連産業の就業人口は542万人に上り、自動車生産の経済波及効果は2・5。主力産業として国内経済を支える。

 今回の変革は、市場環境が大きく変わるなか「自動車業界内の競争だけでなく、新しいテクノロジーカンパニーとの競争に対処していかなければいけない」という産業存続の危機感が背景にある。排ガス規制や日米貿易摩擦など、個社では乗り越えがたい課題にオールジャパンで立ち向かう軸として自工会がある。今回も回答のない・予測しがたい未来に向かって挑戦する体制を整備する。

 新体制では、副会長にヤマハ発動機の日髙祥博社長といすゞ自動車の片山正則社長を迎え、二輪車・大型車を含めたオールジャパン体制を敷く。フルラインアップでの取り組みを基本としており、軽商用や軽トラなど日本のライフラインを支える軽自動車についても将来的に代表を迎え入れたいとしている。

 また委員会は、次世代モビリティとサプライチェーンのほかに総合政策、環境技術・政策、安全技術・政策とし、従来からの枠組みを大括りすることで省庁を越えて動くプロジェクトを提案するよう取り組んでいく。実際、水素社会の実現では、モビリティ面においては燃料電池車の実用化とともに製造・物流などのインフラを含めたシステム構築が不可欠であり、そういった方面とのコミュニケーションを加速していく考えだ。

 新興国の台頭や産業技術の高度化などにより、各産業分野でビジネスモデルの転換が迫られている。自動車関連団体では日本自動車部品工業会が今年度の総会で会員資格を改訂し、材料メーカーやソフト開発企業などへと新たに門戸を開いた。ピンチをチャンスに変えるべく動き出した自動車業界。新たな挑戦に期待したい。

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