韓国においてフォルダブルスマートフォンの市場が急拡大している。同国のメディアによると、8月に発売されたサムスン電子の最新フォルダブルスマホ「ギャラクシーZフォールド3」「ギャラクシーZフリップ3」は、同国内の事前予約だけで90万台以上に上り、100万台の大台が確実視されている。今年10月までに100カ国以上で販売する計画で、年内に全世界で1000万台を突破する可能性がある。多くの材料メーカーがフォルダブル市場に懐疑的な目を向けてきたが、新しいデバイスが市場に浸透する時はあっという間だ。

 日本ではほぼ見かけないフォルダブルスマホ。一方、オンライン取材した日系企業の韓国駐在員は「4人で会議した際、私以外はフォルダブルスマホだった」と話した。日韓で景色が異なるようだ。

 韓国はスマホ大国。スマホ所有率の調査で長年にわたって首位を走っている。普及率は100%近い。世界で初めて5G(第5世代通信)サービスを始めるなど通信インフラも整う。またサムスン電子にパネルを供給するサムスンディスプレイ(SDC)は、米アップルのメインサプライヤーでもあり、フォルダブルを含む中小型の有機ELパネル市場を牽引する存在だ。こうしてみると、韓国でフォルダブルスマホがはやるのもうなずける。

 2019年に発売されたサムスンの初代ギャラクシーフォールドは、高額なうえに画面の不具合なども報告され、販売は伸び悩んだ。3代目のZフォールド3の販売価格は初めて20万円を切った。耐久性が向上し、スマホで初めてディスプレイの下にカメラを搭載する「アンダーディスプレイカメラ」(UDC)を採用するなど性能も大きく進化した。珍しさが先行していたフォルダブルは、ここにきて市民権を得た印象だ。

 スマホの画面は年々拡大して、今では何とか片手に収まるサイズ。同様にテレビもサイズが大きくなっており、ディスプレイは画面が大きいほど好まれるようだ。この理屈で言えば、片手でタブレットサイズを持ち運べるフォルダブルスマホは普及して当然といえる。

 SDCは今後、グーグル、シャオミにもフォルダブル有機ELパネルを供給する見通しだ。23年には米アップルの市場参入も予測されている。市場は層の厚さが増し、材料メーカーの商機も広がる。フォルダブル対応の新素材が求められ、今後はUDCのように新技術の開発競争がフォルダブルに移ることも考えられる。開発資源を早期にシフトするほど、市場が本格化した際の実りは大きくなる。

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