世界で生産される食料のうち、3分の1が食べられることなく廃棄されている。そんななか中国で、フードロスをなくすため食べ残しを禁止する法律「反食品浪費法」が4月末に可決された。過剰な量の食べ残しをした客に対し、飲食店側は食べ残した分の処分費用を請求できるという。

 日本に目を向けると、2018年度の食品ロス発生量は600万トンに上る。実に東京ドームの約5杯分だ。前年度に比べて2%減となり、推計を始めた12年度以降で最少となったものの、いぜんとして高い水準で推移し続けているのが現状といえる。

 SDGs(持続可能な開発目標)対応などの高まりを背景に、賞味期限や消費期限の延長に取り組むことが急務となっている。より日持ちする商品の研究開発に力を入れる事業者が増えるなか、食品添加物の有効性が改めて見直されるべきではないか。

 日本食品添加物協会によると、食品添加物の食品への直接的な役割は大きく分けて4つ。1つ目は食品の製造または加工する時に必要で、例えば豆腐の凝固剤やかん水だ。食品としてのかたちを作ることを助け、多くの人に栄養を届けているといえよう。

 2つ目が食品の品質を保つこと。保存料や酸化防止剤など食を「安全に」「長持ち」「おいしく」させ、食品ロスの低減につながるものだ。3つ目には味や香り、食感、色にかかわる嗜好性の向上が挙げられる。甘味料、香料、調味料、着色料などにより、おいしくさせることが食の楽しさの演出はもちろん、食欲の向上を通じて食べ残しを減らすことにもなる。

 4つ目の役割は栄養価の補填・強化だ。ビタミン、ミネラル、アミノ酸など日本において栄養強化剤は食品添加物となっている。食品ロスの低減で考えた場合、資源を無駄遣いしないことや、廃棄時の焼却を減らして温室効果ガスの発生を減らすことにもつながり、環境への貢献という意味合いもある。

 食品添加物が「使われている」か「使われていない」かだったら、使われていない食品を選びたいと思う消費者も少なくなかろう。ただ食品添加物は、安定した食の供給を下支えしていることを忘れてはいけない。安定した食の供給が飢餓をなくし、さまざまな産業や福祉を支えて社会の発展に寄与している。

 「持続可能な」というキーワードに対しては環境への貢献、多様な消費者に多様な食品の選択肢を提供する役割を担っている。食品ロス削減を目指すうえで食品添加物の有効活用の機運が高まり、選択肢の一つとして大いに利用が広がることを期待したい。

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