自社の製品やサービスの価値を高めるために行うブランド戦略。最終製品を扱う企業のみならず昨今、どの業界においてもブランディングが経営の重要な要素の一つとなっている。安定した売り上げの確保や企業イメージの向上、新しい市場への進出など、そのメリットや必要性が認識されるなか、ブランド戦略に力を注ぐ企業が増えている。

 化学、医薬、食品といった幅広い業界を対象にグラスライニング(GL)製品を展開する神鋼環境ソリューションは、同社が世界で初めて開発した複数の機能を兼ね備えたハイブリッドGL製品の新ブランドを立ち上げた。GLは金属を腐食などから保護するため、鋼の表面にグラスを結合させる複合化技術。多くの用途で用いられているが、製品の高純度化・高品質化、生産の少量・多品種化が進むなか、GL本来の機能である耐食性のみならず複数の機能が求められている。

 同社は2016年に異なる機能性グラス層からなるハイブリッドGL製品の開発に着手し、17年に高伝熱性GLと耐静電気GLを組み合わせた「HYX(ハイクロス)-HE」を製品化。さらに高伝熱性GLと高洗浄性の医薬用GLを複合化した「同HP」に続き、新製品として高伝熱性と低溶出性を兼ね備えた「同H95」を開発した。新製品販売に合わせテクノロジーブランド「HybridGL」を立ち上げ、国内のみならず今後需要が予想される海外を含むグローバルでブランド戦略に乗り出した。引き続きHybridGL製品のラインアップを拡充していく方針で、新ブランドを軸に市場での認知度アップおよび普及促進を狙う。

 第一工業製薬は、アミノ酸など多種の栄養素が含まれるスーパーフード「カイコハナサナギタケ冬虫夏草」をリニューアルし、新ブランド「天虫花草」として販売を開始した。カイコとキノコの同体を粉末化し、それをそのまま商品化することで「すべてを捨てずに摂取する」ホールフーズ志向のエシカルブランドと位置付けPRに努めている。また本社を置く京都の異業種企業とのコラボレーションを積極的に展開中だ。

 ブランド戦略は、消費者のみならず、多くのステークホルダーの関心を引きつけるなど、企業のさらなる成長に結びつく。ただブランディングにかける費用や時間がない、ノウハウや経験がないなど、なかなか踏み出せない企業も多い。しかしターゲットやコンセプトを明確にし、市場で確固たるブランド・アイデンティティーを確立することができれば、多くのメリットを享受できるだろう。

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