原材料価格の上昇がプラスチック加工業界に影を落とし始めている。半導体不足によって自動車の生産に一部影響が出たものの、業界としては「自動車」や「電気・電子・通信部品」は好調な様子がうかがえる。しかしプラ加工業界からは「半導体不足解消とワクチン接種率向上で回復が期待できるものの、次の問題は原材料不足と価格高騰にある」との声が上がっている。

 全日本プラスチック製品工業連合会の2021年4~6月期の会員景況感調査報告によると、生産・売上高は前期(1~3月期)に比べて「増加」が1・8ポイント増え「減少」は4・4ポイント減った。中国や米国の経済回復、国内での自動車の生産回復などによって復調してきた感じがする。製品別にみても自動車は「増加」が67・0%、電気・電子・通信部品は62・0%と好調な様子がうかがえる。

 しかし前年の同時期は、新型コロナウイルス感染拡大による自主規制で売り上げは大幅に落ち込んでいた。今回は少し持ち直したが、いまだ続くコロナの影響で、通常ベースには戻っていないというのが同連合会の見方だ。

 さらに、ここに来て原材料単価は「上昇」が前期比17・1ポイント増の69・9%と増えた。経営上の問題点も、原材料高は前期比13・5ポイント増の65・6%となった。

 会員からは「原材料が高騰し得意先との価格交渉に苦戦している」「原料不足、値上げで生産に影響が出ている」「ナイロンをはじめとした樹脂材料の入手が困難で、コストアップへの対応に苦慮」など、ここに来て原材料価格の上昇が経営を圧迫している切実な声が上がった。同連合会では、今年2月に北米を襲った寒波の影響でナイロンの供給が滞った影響を引きずっているとみている。

 コストアップ要因は、まだある。例えば鋼材価格も上昇している。20年9月ごろから自動車や家電製品で使われる鉄鋼需要が増加した一方、粗鋼生産量で世界首位を誇る中国が、鉄鋼生産にともなうCO2排出量を削減するため供給を減らしたことで、ドラム缶など鉄鋼を原料とする製品の価格が上昇、化学品の価格に転嫁され始めている。

 物流費も高騰している。コンテナ不足や海上輸送の停滞から物流費は従来の2倍超に高止まりしている。日本から輸出するためのISOタンクコンテナが足らず、中国などから空のコンテナを搬送している状況という。

 今後、さまざまな製品価格への転嫁が予想されるが、放置すれば悪性インフレになる可能性もある。官民が一体となり難局を乗り切る策を講じて欲しい。

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