日本プラスチック工業連盟は独自に策定している「プラスチック資源循環戦略」の内容をアップデートした。国の目標として「2050年カーボンニュートラル達成」が掲げられたことに合わせ、プラスチック資源循環の基本的考え方にも、カーボンニュートラルを化学業界全体として達成していくことを盛り込み、その実現のため化石原料を一切使わない想定とした。

 プラ工連は18年10月、プラスチック最適利用社会の実現に向けて「基本的な考え方」を公表。19年5月にプラ工連版「プラスチック資源循環戦略」として打ち出している。同戦略で約束した取り組み項目は、再生材利用推進やケミカルリサイクルの促進、バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの利用推進、PETボトルなどリサイクルしやすい製品の100%回収(流出ゼロ)および100%有効活用など。今回のアップデートでは、ケミカルリサイクルについて社会実装に取り組む会員企業が数社登場していることから、「促進」の表現を「推進」に改めるなどの修正を行った。

 カーボンニュートラルを目指す国の方針と整合性を持たせるため、基本的な考え方も一部変更。エネルギーはすべて再生可能なものとし、循環できないプラスチックは、すべてエネルギー回収に活用する前提とした。現状、容器包装リサイクル法に基づく「容リプラ」は、マテリアルリサイクルする場合の収率が約50%。残りはエネルギー回収に向けられ、その分はCO2が発生する。カーボンニュートラル達成には化石原料由来を使わず、CO2を吸収ずみのバイオマスプラスチックを投入することで差し引きし、つり合わせる考え方とした。

 リサイクル樹脂はバージン材との価格差が課題だが、50年以降は石化由来のバージン樹脂がなくなるとの考えに立ち、さらに高価格と予想されるバイオプラの使用量を抑えるためにもリサイクル比率向上が不可欠となる。このため重要なテーマの一つがリサイクルの収率向上で、可能な限り単品回収できるようにする工夫などが必須となる。

 資源循環戦略を進めることで、現状よりも高コスト構造になることは免れない。課題は消費者やブランドオーナーがこうしたコストを受け入れる覚悟があるかだが、デフレを脱し切れない日本の社会が新コスト構造に移るには紆余曲折が予想される。しかし、これは全世界共通の課題。コスト低減に向けた技術開発はもちろんだが、社会に新たなコスト構造を浸透させるために、すべきことを官民それぞれが考えていくことも避けては通れない。

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