メンズコスメ(男性用化粧品)の需要が拡大を続けている。若年層を中心としたスキンケアへの関心の高まりに加え、オンライン会議の普及が進んだことで、画面で健康的な印象を演出したいと考える中高年男性も増えている。調査会社のTPCマーケティングリサーチ(大阪市)によると、2021年の市場は前年比1・8%増の1463億円で、この15年間で約1・4倍に拡大している。

 従来、メンズコスメは男性が身だしなみや清潔感を重視して取り入れる傾向が強く、洗顔料やにおいケア、育毛、整髪などが牽引役となってきた。18年以降は、SNS(交流サイト)などが普及したことで男性でも、より気軽に商品の購入や情報収集が行えるようになり、好調な推移を遂げているといえよう。

 そのなかで化粧品各社は男性の需要を取り込もうと、製品展開の強化に動く。

 資生堂は今年6月、高級ブランド「SHISEIDO MEN」以来、19年ぶりとなる男性向け新ブランド「SIDEKICK」(サイドキック)を立ち上げた。1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」の男性をターゲットに洗顔料や化粧水、クリームなどを取り揃える。

 コーセー子会社のコーセーコスメポートは、活性化するメンズコスメ市場を見据えて20年に発売した「マニフィーク」ブランドの愛用者獲得に力を入れる。マニフィークは「男性用」「女性用」という固定概念にとらわれない、スキンケア効果や使い心地にこだわるジェンダーレス発想の男性向けブランドだ。

 スキンケアブランド「DUO」(デュオ)などを展開するプレミアアンチエイジングも今春、メンズコスメ市場に本格参入した。汗や皮脂の影響を受けている男性特有の肌にアプローチし、まず洗顔料と化粧水を展開。性別に関わらず、自身のコンディションを整えたいというニーズに応え、シェア拡大に挑む。

 新型コロナ収束の気配がなく、人口減少も踏まえると、女性向けを含めた国内の化粧品市場全体では今後、大きな伸びを見込むことが難しい。一方、男性の化粧品の使用率はまだ低く、最近ではスキンケアのみならず、ネイルケアにも注目が集まるなど商品の幅は広がりをみせている。

 「男性は美容への関心が低い」-というのは、もう一昔前の話。女性だけでなく男性も「美活」にいそしむライフスタイルは着実に普及しつつある。ただ、さらなる市場の拡大には、リアルとオンラインで商品の魅力を伝え、潜在顧客との接点を増やす情報発信力が一層求められる。各社の知恵の絞りどころだ。

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