メーカー系化学品商社が新たな試みを始めている。歴史をさかのぼると、これまでは主に親会社である化学メーカーが製造する各種商材を、国内および海外市場に販売する役割を担ってきたが、近年は独自に研究・開発したり製造機能を保有するところも多い。また企業グループにこだわらず、国内外のさまざまな企業と連携して新商材を開拓し販売するなど、従来になかった活動を進めている。親会社の事業を譲り受け自社で取り組むことによって、その販売領域を拡大しているケースもある。グループ企業と連携を図りながら、それぞれの特性を生かした事業展開を進めているようだ。

 メーカー系化学品商社のなかで、三井化学ファインは4月から全社横断プロジェクト、業務フロー改革、サプライチェーンマネジメント改革を開始した。今後の施策として新製品開発と製造機能の強化により自社製品の販売を拡大するという。親会社の三井化学とのコラボレーションも強化し、その研究インフラや人材の活用により、川上から川下まで広範な製品を開発・販売するという。

 また日曹商事は2019年に創業80周年を迎え、新たな時代へと移行した。注目される動きとして、同年6月のクニケミカルからの電子材料・非鉄金属販売事業の譲受が挙げられる。今後は日曹商事の販売ネットワークを活用し、クニケミカルが扱ってきた電子・自動車部品向けメッキ液用材料を中心とする表面処理用機能性材料を既存顧客に販売。加えて新規顧客への提案も推進し、新規事業として積極的に取り組んでいく。

 昭光通商は事業構造改革、経営マネジメント改革、人材改革を推進している。事業構造改革ではプラットフォームビジネスを志向。新たに立ち上げた補助金申請サポートや、省エネ診断を組み入れたプラットフォームビジネスなどの新規ソリューションビジネスに取り組む。また開発中の新システムの完成を急ぎ、取引先との電子取引の拡大や受発注・会計業務の効率化を進める。

 コロナ禍で今後も厳しい経済情勢が続くことが予測されるなか、メーカー系化学品商社も単独で高い収益性を確保することが重要となってくる。これら商社が優れているのは、親会社に比べ規模は小さくとも小回りの利く営業体制を作り上げている点だ。親会社では補い切れない領域に食い込み、顧客が求めるものを臨機応変に提供することで、これまで以上に企業価値を高められるだろう。近年各社が進めている機能強化は、これを促進する取り組みでもある。今後の活躍が期待される。

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