化学品商社などで重点テーマの一つとして「ライフサイエンス」を掲げるケースが増えている。近年、各商社ではエレクトロニクスや医療、環境などの分野をテーマに挙げるケースが多いが、将来にわたってサステナビリティ(持続可能性)を重視した事業展開が求められるなか、環境負荷軽減と人の健康に貢献するライフサイエンスに着目するのは当然とも言える。同分野へのチャレンジで新たな市場や用途を開拓しようと試みる企業も多いようだ。ベンチャーやスタートアップを含む国内外のメーカーなどと連携した活動も注目される。

 三井化学ファインは植物・微生物由来の商材について今春、酵母由来コラーゲンでヴィーガン(完全菜食主義者)認証を取得。さらにヒアルロン酸ナトリウムなど複数の商材で申請を予定している。CO2削減に貢献し、体にも優しいハーブのモリンガなど、環境負荷軽減や健康を意識した化粧品および食品の原材料も数多く取り揃えた。環境保護や健康志向への関心が高まりつつある日本や海外市場に向け、これら新たな商材の販売を促進していくという。

 また昭光通商は、カナダのラレマンド製の酵母/酵母エキスの新規用途開拓を強化している。従来の食品用途に加え、バイオプラスチックなどを製造するうえで必要な培地成分として同酵母/酵母エキスを提案していく考え。新たに化学品用途を加えることで市場の裾野を広げ、環境負荷軽減に貢献するとしている。

 小西安は今年3月、がんや新型コロナウイルスなどのワクチンを研究・開発している米スタートアップ企業のVLPセラピューティクスに出資し、同社の開発を支援している。今後はライフサイエンスビジネスとして化粧品材料など医薬品以外の商材への取り組みを拡充するのに加え、海外市場開拓にも力を注ぐ。

 農業関連では、機械商社の第一実業が育苗ビジネスに参入している。液体培養技術の採用によって、高品質で病原菌などの汚染密度が低いイチゴ培養苗を大量かつ安定的に供給できる体制を作り上げ、2022年に供給を本格化させる計画だ。すでに第一実業ベリーズファーム(埼玉県入間郡)で生産したイチゴ培養苗のサンプル供給を行っており、来年の本格供給に備えて準備を進めるという。今後は同苗の提供により、閉鎖型植物工場でのイチゴの周年生産への貢献を見込む。

 ライフサイエンスと一口に言っても、その内容はさまざま。ただ地球環境への負荷軽減に貢献するという意味では共通している。今後、商社が取り組むべきテーマの一つとして注目される。

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