使用済みの単回使用医療機器(SUD)を収集し分解・滅菌など必要な処理を行い、再び組み立てて再利用する取り組みが始まっている。「再製造単回使用医療機器」(R―SUD)と呼ぶもので、厚生労働省が創設した新制度の対象品が昨年、初めて承認された。一方で患者や医療機関、企業それぞれがどんな利点を得られるのか明確でない側面も多い。医療に根付くには諸課題への対応が必要だ。
 かつては使用済みの医療機器の一部を、医療機関が院内で分解・滅菌して再使用することが横行していた。ただ医療機器の性能や安全性を保証できないことから、米国食品医薬品局(FDA)は院内での再処理を一切禁じ、一方で第三者の再製造業者が参入できる仕組みを2000年に導入。これを受けてドイツなども制度整備を進めた。
 厚労省では、14年に特段の合理的理由がない限りSUDを再使用しないよう通知を発出する一方、研究班を設けて海外規制の調査や国内で再製造を実施する場合の課題を整理。17年にはRUDの再製造に関する制度を新設し欧米同様、企業にRーSUDの市場を開放した。
 洗浄・滅菌、部品交換など厳格な工程を経て再製造されるR―SUDは、オリジナルと別の品目として認可され、薬機法上の安全対策や回収などの責任は再製造業者が負う。再製造品はシリアル番号が付され、収集医療機関から製造工程、流通まで履歴を追える。再製造回数も品目ごとに決められ、それらが管理された下で再販売される。
 感染などに対する患者の安全確保を起点に始まったR―SUDだが、資源の有効活用、医療廃棄物の削減、医療費削減といった効果が見込める。医療機関側も費用のかかる医療廃棄物の処理負担を軽減できる。一方で再利用できる医療機器と、そうでないものを院内で仕分ける業務にどう対応するか、手間のかかる収集をどう最適化するかといった課題は残る。
 海外のR―SUDの価格はオリジナル品に比べて2~5割低い。日本の保険償還価格は現時点はオリジナルと同一だが、20年度の診療報酬改定では、開発に治験を必要とするバイオ後続品が0・7倍に設定されることを参考に、R―SUDも同水準で値付けされる方向にある。
 医療機器は長期処方が一般的な医薬品と異なり、改良・改善が頻繁に行われる性格を持ち、数年経てば陳腐化してしまう恐れがある。R―SUDに関して言えば、短期間に企業が市場投入して得る事業機会はどれほどか。患者を含めて医療に関わる関係者には、まだまだメリットが見えにくい。

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