首都圏の緊急事態宣言が解除されたが、コロナ禍によって企業の体力は削がれた。発表を終えた3月期決算企業の多くは今期の業績予想を未定とし、12月期の企業も1~3月期業績発表に合わせて表明していた通期予想を相次ぎ取り下げた。今年下期からの回復を見通す企業が多いものの、手探り状態の事業環境が当分続くといっていい。

 「不確定要素が多く合理的な予想が困難」。今期業績予想を未定とした企業は、その理由をこう挙げる。さらに帝国データバンクの調査によると、新型コロナウイルスの影響で5月20日までに643社が業績予想を下方修正した。これにより減少した売上高の合計は5兆円に届きそうな勢いだ。製造業を筆頭にサービス業、卸売業、小売業など幅広い業種が実施した。

 収束のめどが立たないなかで関連倒産が相次ぐ。老舗アパレルメーカー、レナウンが事実上経営破綻し、上場企業で初のコロナ倒産の事例となった。あらゆる分野において需要に影響が出ているが、外食やレジャー、ショッピングなどをはじめとした産業分野では外出自粛が直接的に業績に響いた。

 米中貿易摩擦が大きく影響した世界経済の減速で厳しい環境を覚悟していたところに、コロナの影響で今度は自動車や電機業界が減産・休業に踏み切るなどサプライチェーンが根本から崩された。化学業界に影響が出るには時間差があるといわれるものの、世界経済が減速傾向にあった時期に、輪をかけるように巻き起こったコロナ騒動から受ける打撃は大きかった。

 外出自粛要請のなかで、テレワークや時差通勤といった新たな勤務形態の普及が一気に進んだ。これらの動きは緊急事態宣言の解除後も根付いていくことだろう。働き方改革という名の下、企業も従業員も、これまでとは違う価値観に基づいた取り組みを進めるに違いない。

 先が読みづらい状況下、事業計画を白紙に戻すのか、回復を見越して描いた成長戦略を確実に実行していくのか、コロナとの共存を前提に新たな戦略を立てるのか。コロナの第2波襲来も取り沙汰されるなかで、企業には一層難しい判断が求められてくる。そのためにはスピード感とともに慎重さも必要になるだろう。

 こういう状況下だが、企業に求められることには変わりはない。サステナブルな社会の実現に貢献しながら人々の生活を豊かにしていくことであり、化学企業は、その最先端を走っている。不透明さが増す事業環境のなかにあっても、焦ることなく今後の方向性を柔軟に考えるタイミングだともいえる。

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