「燃料アンモニア導入官民協議会」が先ごろ中間取りまとめを発表した。アンモニアは燃焼時にCO2を排出せず、製造時に排出するCO2を処理すればカーボンニュートラルを実現できる。取りまとめでは課題、官民の役割、導入拡大に向けた行程表が示された。今後も半年に1回程度見直すとしている。

 同協議会は、政府が2020年10月に「50年のカーボンニュートラル実現」を宣言したことを受けて、燃料アンモニアの利用拡大へ検討を加速するべく同月に設立された。同年末発表されたグリーン成長戦略で14重点分野の一つに「燃料アンモニア産業」が位置づけられ、新たな産業として育成することとされた。

 30年時点では石炭火力発電への20%混焼を想定しており、国内大手電力会社のすべての石炭火力を置き換えると4000万トンのCO2削減効果がある。50年に100%専焼に置き換えると2億トン削減できる。日本全体のCO2排出量の40%を占める電力部門で、CO2排出量を半減させる量だ。

 アンモニア発電にかかわる技術開発は内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(14~18年度)で実施され、窒素酸化物の発生を抑制できるとの知見を得ている。今後も低温低圧のアンモニア合成技術や電解合成技術など開発課題はあるが、ハーバー・ボッシュ法は化学原料や肥料製造用プロセスとして実用化されており、インフラもすでに整っている。石炭火力に近いレベルまでアンモニアコストを下げる必要はあるが、社会実装に向けた技術的課題は、他の水素関連技術に比べれば少ないと評価されている。

 課題はサプライチェーン(SC)の構築にあるだろう。世界のアンモニア生産量は約2億トンで、貿易量はその1割。日本で30年にすべて20%混焼に置き換えると世界の貿易量に匹敵する2000万トンが必要になる。

 燃料アンモニアの評価が高まれば世界市場で奪い合いが発生する。技術的な優位性が小さいとすれば世界に先んじてSCを構築する必要がある。資源国や石油メジャーに主導権を握られている石油や天然ガスとは違った市場ルールを構築したい。

 日本エネルギー経済研究所とサウジアラビアとのブルーアンモニアSC実証事業や、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によるロシアでの事業化調査事業は、供給側との関係強化につながると期待される。中間取りまとめでは、50年には日本企業による1億トン規模の調達SC構築を目指すとし、技術ノウハウの海外展開も想定する。スピード感が何よりも求められよう。

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