好調な半導体や自動車生産などを背景に業績を回復させる企業が目立つ一方で、中小企業や小規模企業はコロナ禍の影響を大きく受けている。3度目の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置は観光や交通機関のかき入れ時だった大型連休明けまで続き、さらに対象地域の拡大、延期が決まった。需要の低迷は体力的に厳しい中小・小規模企業に追い打ちをかける。

 東京商工リサーチのまとめによると、新型コロナウイルス関連の経営破たん(負債1000万円以上)は、4月まで3カ月連続で最多件数を更新したという。負債1000万円未満の小規模倒産を含めたコロナ関連の破たんは累計1400件を超えた。時短要請などに応えた飲食店や商業施設への金融支援策は継続されるものの、事態の長期化による息切れや、あきらめ型破たん、過剰債務の問題も浮上しているという。

 4月に閣議決定した中小企業白書・小規模企業白書は「危機を乗り越え、再び確かな成長軌道へ」をテーマに掲げた。財務の安全性を確保し、時代の変化に合わせて経営戦略を見直すこと、事業継続力と競争力を高めるためのデジタル化の重要性を指摘している。

 デジタル化に関しては働き方改革や効率化に加え、テレワーク推進など事業競争力強化の観点で取り組む企業が多い一方、アナログ的な文化・価値観の定着など組織的な課題や明確な目的・目標が定まっていないといった事業方針上の課題があると指摘。デジタル化に積極的に取り組む組織文化の醸成や業務プロセスの見直しなどが必要なほか、経営者が積極的に関与し全社的に推進することで、より大きな成果を生み出すことができる可能性があるとした。

 この間にテレワークの普及が進んだが、大企業に比べて中小企業の普及率は低い。これには業務のシステム化・ペーパーレス化が進んでいなかったり、製造業やサービス業など対物・対人形式の仕事内容では現場で働いたりする必要があるからだ。また業務が細分化されていない部署に関しては、在宅勤務では明確な指示が出しにくいといったことも指摘される。

 その意味では白書が指摘するように、組織的な改革や業務プロセスの見直しが不可欠になってくる。ただ国内企業の大部分を占める中小企業のすべてに、そのノウハウ・システムの導入を進める体力があるとは言い難い。事業承継や人材確保といった古くから指摘される課題もある。中小企業が持続的な成長を図れる制度の拡充とともに、自らが大胆な変革に挑戦する判断も重要性を帯びている。

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