コロナ禍の打撃から経営環境は緩やかな回復傾向にあるものの、中小企業・小規模事業者にとっては厳しい状況が続いている。原油・原材料価格や物流費の高騰なども大きな負担になっており、コロナ感染者の再拡大懸念も常にくすぶる。先行き予断を許さない環境下で事業継続力と競争力を高めるには、財務の健全化と、時代の変化に対応した経営戦略の見直しが引き続き問われる。

 2022年版の中小企業白書では、中小企業が足下の事業継続と成長につなげる方法の一つとして事業再構築の重要性を強調。これらを支える共通基盤に、コスト変動に対する価格転嫁といった取引適正化やデジタル化、伴走支援を挙げた。

 とくに経営を変革する過程で多くの壁に直面している経営者にとって、第三者による伴走支援は有効な手段だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)、SDGs(持続可能な開発目標)、カーボンニュートラル、国際情勢の流動化、新型コロナウイルスといった取り巻く環境変化に迅速、柔軟に対応するには自己変革力が必要である。支援機関が経営者に寄り添って伴走支援することで壁を乗り越えて自走化に導き、自己変革が促される。

 中小企業庁は、昨年10月に「伴走支援の在り方検討会」を立ち上げ、経営環境の変化が激しい時代において経営資源が限られている中小企業、小規模事業者に対して、どのような伴走支援を行えば成果につながるかを検討。中小企業支援に携わる国、地方自治体、支援機関、金融機関、支援者それぞれの力を結集していく目的で、3月に検討会での議論を取りまとめた報告書を公表した。

 このなかで、補助金などの支援による従来の「課題解決型」に代えて、経営力そのものが問われる不確実性の時代は「課題設定型」の伴走支援の重要性が増していると指摘した。また支援スキルを実践できる人材の育成、拡大が急がれるほか、知見・ノウハウの発信や共有、インセンティブ付け、制度改正、推進体制といった全国展開の仕掛けによって、伴走支援を定着させる必要があるとした。官民合同チームや商工会議所による支援事例を挙げ、設定された課題に対して適切な支援アプローチを行い、経営力が向上した例を示している。

 日本の大多数を占める中小企業の競争力を高めるには、支援機関などによる伴走支援が行いやすい体制を早急に整える必要がある。中小企業や小規模事業者の潜在力発揮、ひいては日本経済の成長、発展に重要であり、大きな社会的役割を担うものと考える。

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