わが国にとって今年の一大イベントとなる東京オリンピックの開幕まで半年を切った。パラリンピックを含めて期間中の観客と大会スタッフ数は1010万人、1日当たり最大約92万人と予想される。国や東京都などは大会の円滑な運営・成功と経済活動維持の実現へ向けて、交通混雑を抑制する取り組みを進めている。産業界およびトラック輸送をはじめとした物流業界にもサプライチェーン連携による効率化が求められる。
 オリンピック・パラリンピックが開催される7月から9月上旬は例年交通量が多い。期間中は、これに選手や大会関係者の車両などが加わり、首都高速道路の交通量が1日当たり約7万台増加するとの予測がある。何の対策も施さない場合は、首都高の渋滞は現状の2倍近くになり、都心に向かう一般道でも渋滞が想定される。
 このため東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、東京都、国が2018年8月に大会時の交通混雑解消を目指す「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」を発足させている。交通量の抑制・分散・平準化により、平常時の交通量に比べ都心部で30%、東京圏の広域(圏央道の内側)で10%、それぞれ削減することが目標。首都高については、交通量を最大30%減らすことで休日並みの良好な交通環境を目指す。
 物流については、サプライチェーン全体での協力が重要となる。事業用トラックが輸送する貨物は、発側および着側の荷主からの受け取りまたは引き渡し日時などの指示を受けることがほとんどで、トラック運送事業者の都合による配送は、ほとんどない。物流事業者だけではTDMの実効性を高めることは不可能で、荷主側の相互理解が欠かせない。
 このため各分野の荷主企業、物流事業者の双方に対し、業種や業態ごとの特性に配慮するとともに、大会物流による影響も考慮しながら連携して物流効率化、走行台数の低減に向けた取り組みなどの協力を要請した。具体的には、複数荷主の連携による倉庫の共同使用、共同輸配送、分散している複数荷主の物流拠点の統合による輸送網の集約、十分なリードタイムでの発注による柔軟な輸配送時間帯の設定、在庫調整による輸配送日の平準化、納品時間の夜間への変更などを求めている。
 トラックやローリーのドライバー不足などを背景に、わが国では「物流危機」が叫ばれている。企業の枠を越えた共同輸送を含め、オリンピックが物流効率化の取り組みが進む契機になることを期待したい。

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