3月3日のひなまつりに合わせ、今年度の「なでしこ銘柄」「準なでしこ」が公表された。なでしこ銘柄は、経済産業省が東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を顕彰する取り組み。投資家の関心を高めることにより、各社の女性が活躍しやすい環境作りを加速するのが狙いだ。ただ選考に当たって発送した調査書に回答したのは、3600を超える上場企業のうち554社にとどまっている。大手企業で構成されるJPX日経400企業でも半数に届いていない。日本企業には女性活躍へ、より積極的に取り組んでもらいたい。
 女性の就業者は増えているものの、上場企業に占める女性の割合は5・2%に過ぎない。こうした日本の現状からすると、なでしこ銘柄に選ばれるのは容易ではない。まず女性活躍の推進に向けた行動計画を策定し、厚生労働省の女性活躍推進データベースに女性管理職比率を開示するところから始まる。女性取締役は必須要件。女性活躍度調査に回答し、その結果と財務指標による加点を経て、まず業種1位の企業が、なでしこ銘柄に選ばれる。相対的に数が多い業種は2位までとし、各業種において、1企業のスコアの85%以上で全体順位の上位15%程度以上の企業も、なでしこ銘柄と選定される。トップ企業のレベルが高い業種の企業を正当に評価するため、全体順位で15%以上のスコアであるにもかかわらず選ばれなかった企業は、業種の枠を問わず、準なでしことして顕彰される。
 8回目を迎えた今年度は、なでしこ銘柄が46社、準なでしこが20社となった。化学業界からは、なでしこ銘柄に積水化学工業、花王、DICの3社、準なでしこに三井化学と資生堂の2社が選ばれた。
 ただ選ばれなかった企業であっても調査に参加することには意味がある。選考後に公表する報告書に「なでしこチャレンジ企業」として掲載されるため、女性活躍への意欲をアピールできる。また、自らのスコアと全体や同業の間での位置づけも分かるので、今後の取り組みへの指針を得ることができる。
 女性が活躍できない企業では男性も活躍できない。就業しようとする学生にも、それが分かっている。女性が活躍できる企業は、女性はもとより男性の採用でも有利になるという。イノベーションを生み出し、価値創造につなげることが強く求められる現代においては、多様な人材の活用を通じて自由な発想を引き出すことが重要になる。女性が活躍できる環境にあることは、そうした基盤が整っているという端的な指標になる。

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