小口保冷配送サービスに関するISO(国際標準化機構)規格が発行された。日本が官民一体となって主導的に取り組んできたもので、食品をはじめとした物流・流通において適切な温度管理の実現が期待される。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)を中心に低温物流の需要が増大傾向にあり、これらの地域では物流品質の向上が強く求められている。各国のSDGs(持続可能な開発目標)達成の促進はもとより、低温物流に関する長年の蓄積ノウハウを持つ日本の物流事業者のプレゼンスを一段と高める機会としても意義は大きい。

 コールドチェーンは、商品の生産現場から消費者に届けるまで所定の温度(低温・冷蔵・冷凍)を維持したまま管理し、流通させるシステム。とりわけ生鮮食品などは常温流通から定温流通に切り替えることで長期保存が可能となり、広域での流通を実現するほか、世界的に社会問題となっている食品ロスの削減にも寄与する。また厳密な温度管理を要するため全国への輸送が難しかった医薬品や化学薬品、血液パックなどの物流にも大きな革新をもたらした。

 経済成長を背景とした高所得化にともない生活水準の向上が進むアジア諸国では、生活様式の多様化や電子商取引(EC)市場の拡大により、食料生鮮品などを一般家庭などに届ける小口保冷配送サービスのニーズがとくに高まっている。ただ一部の国では温度管理が不十分な物流事業者も散見され、コールドチェーンの品質に対して消費者や荷主から信頼が得られていないとの見方もある。

 こうしたなか日本は「総合物流施策大綱」(2017~20年度)における重点施策の一つとして、わが国の高品質なコールドチェーンなどの国際標準化や普及を目的とした取り組みを進め、ISOにおける議論も主導してきた。この結果、ISOにで行われた発行を問う最終投票で全会一致をみた。

 小口保冷配送サービスのISO規格では「保冷配送サービスの定義」「輸送ネットワークの構築」「保冷荷物の取り扱い」「事業所、保冷車両、保冷庫、冷却剤の条件」「作業指示書とマニュアル」「スタッフへの教育訓練」「保冷配送サービスの監視と改善」など、輸送過程で適切な温度管理を実現するための作業項目を定めている。規格の普及により、日本の物流事業者の小口保冷配送サービスの品質が適切に評価され、国際競争力の強化および各国における市場の健全な育成と拡大に寄与すると期待される。今後もオールジャパン体制で継続的に取り組みを進める必要があろう。

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