新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に低迷していた設備投資が、ようやく動き始めた。2020年は歴史的な低水準にとどまったが、約1年が経過した。地域や業種による濃淡があるものの、投資再開に向けた動きが相次ぐ。産業機械、プラントメーカー各社は今後、アフターコロナ・ウイズコロナ時代のニーズに合った提案活動が重要となりそうだ。

 コロナによる人の移動制限、都市のロックダウン、失業者の増加、消費低迷などで、ほとんどの国や地域で新規の設備投資が止まった。企業は不要不急な案件を取りやめ、産業機械、プラントなど各社の業績は軒並みダウンした。

 しかし設備投資も、ここにきて再開の動きがある。移動制限の強化を契機に、オンライン型ビジネスが急速に普及・拡大中だ。多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の時代に乗り遅れぬよう、遠隔サービスなどリモート技術の導入を急いでいる。すでにプラント関連企業では、数千キロメートル離れた海外プラントの保守管理を、日本の本社から遠隔サービスする取り組みを進める。アフターコロナ時代に合った業務改革の一つだ。

 統計数字も昨年の最悪期を脱しつつあるといえる。産業機械のなかで景気動向に敏感といわれる射出成形機などプラスチック加工機械の生産をみると、20年は過去10年間で最低。生産台数は、景気動向の指標となる月間1000台を割り込む。しかし昨年12月には月間1200台を突破し、その後も快走している。なかでも中国の自動車市場を中心に需要が回復し、全体を牽引した。

 産業機械業界全体でみると、20年度の受注環境は前半が厳しかったものの、今年2月に中東で天然ガスの大型プロジェクトを受注したことで、外需が大幅増を記録した。年度合計で大台の5兆円を回復する見込み。機種別ではオイル&ガス関連で大幅増となった化学機械のほか、中国向け自動車関連が伸びる。

 このほか日本電気制御機器工業会によると、21年度の電気制御機器の出荷見通しは合計6520億円で前年度比8%増加する。国内はDXの拡大、環境対策の投資増、半導体製造装置、工作機、ロボット、自動車などFA市場が回復する。輸出も、アジアに加えて欧米が持ち直すと予測している。

 コロナが広がり始めて1年が過ぎ、ようやく明るい材料がみえつつある一方、感染が収束するには程遠い状況。経過を見極めながらアフターコロナ・ウイズコロナ時代に即した事業展開が強く求められてくる。

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