近年、脱炭素化の流れは世界的に急激に強まっており、今春時点で世界125カ国・1地域がカーボンニュートラルを目指すと表明。日本も昨年、2050年のカーボンニュートラル、30年のCO2削減目標46%を打ち出すなど、持続可能な社会の実現への取り組みが急がれている。

 国内の電力使用量の一定量を占める家庭部門の削減に向け、住宅業界でも大きな変化が生まれている。新築では省エネ基準についての説明義務化がスタートし、25年には適合についても義務化されるといわれる。さらに30年に向けては適合義務基準の強化についても検討されている。

 こうした動きに先んじハウスメーカーで「ZEH」(ネットゼロエネルギー住宅)といわれる超高性能住宅を重点商品として訴求する動きが相次ぐ。積水化学工業の「セキスイハイム」では、大容量太陽光発電と大容量蓄電池を搭載したエネルギー自給自足型住宅を展開しており、順調に実績を伸ばしている。最新モデルでは年間約260日分相当の電力を太陽光で賄え、約73%ものエネルギー自給自足を実現。CO2排出量を年間で正味マイナス1060キログラム(カーボンマイナス)としている。激甚化する台風など自然災害にも備え、停電時でも蓄電池の電気を活用することで、日常に近い暮らしを継続できるようにし、居住者の安心・安全につなげている。

 国内に6200万戸以上もある既設住宅では、いまだ無断熱・低断熱の住宅も多数残る。数年前のデータでみると現行基準を満たす住宅は10%に過ぎない。耐震性能も9割以上が倒壊の可能性が指摘される状況で、既設住宅への対応も喫緊の課題。今後、高断熱化・高性能化促進の動きが加速するといわれている。

 YKK APは、日本の中古住宅市場が抱える課題の解決を樹脂窓などを活用して実物件で実証する「戸建て性能向上リノベーション事業」に17年度から取り組んできた。築数十年を経過した住宅でも「HEAT20  G2」という国の省エネ基準を大幅に上回る断熱性能、および熊本地震でも、ほぼ無被害だった耐震等級3を、ビジネスとして成り立つコストかをテーマに全国で実施。一定のめどをつけて今年10月、「性能向上リノベの会」を発足して普及促進を図っている。

 人々の暮らしの根幹を担う住宅。これらの取り組みは、住み心地と省エネ性能をともに改善するもの。経済性もある程度カバーできるとなれば十分に普及が期待できる。部材や工法の進化と認知度の一層の向上に努め、高断熱・高性能住宅が当たり前の社会実現につなげてほしい。

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