新型コロナウイルスが猛威を振るうなかで、プラスチックが各所で活躍している。目に見えないウイルスから人々を守るため、ウイルスとの接触をシャットダウンする術としてマスクやフェイスシールド、ガウンなどが医療従事者にとって(マスクは一般消費者にも)必須のアイテムとなっているが、これらはすべてプラスチック(あるいはプラスチックをもとにした合成繊維)でできている。そしてウイルスが付着している可能性がある以上、多くは使い捨てられることが求められる。

 スーパーマーケットを見てもプラスチックが大いに役立っていることが分かる。一般的な包装材料だけではない。コロナ騒動以降、剥き出しで商品を並べるわけにいかず、パンについても一つひとつポリエチレン袋に入れて販売する店舗が一気に広がった。各店舗で手袋を装着する従業員も増えている。顧客と店員の間にプラスチックシートや板の仕切りを設ける動きも浸透した。食堂、居酒屋などがテイクアウトや宅配に力を入れていることもプラスチック需要増につながる。

 コロナ禍の吹きすさぶなか、これまで大きな話題となっていた“脱プラ”から世間の意識が遠のいているといえそうだ。街中では4月からレジ袋を有料化した店舗も多数みられ、着々と歩みは進めているものの、巣ごもり消費でトレーや食品包装フィルムの需要がかえって大きく増加し、家庭ごみの量が増えていることも報じられている。

 これらプラスチックごみに、どれだけウイルスが付着している可能性があるかは分からないが、リサイクルに回すために必要となる分別をはじめとした各種作業が、現状では消費者にも作業者にも心理的な負担になることもあり得る。

 ウイルスからの保護の役割を果たす以上、ウイルス付着の恐れのある医療用具は、人が触れないよう万全の注意を払って処分することが求められる。この点に異論はないだろう。元来、感染症の恐れのある患者に使用するような医療用具は、密閉容器に入れて焼却処分するのが正規のルートだ。新型コロナとの戦いが続く現状、使い捨てから焼却処分に回されるプラスチックが増加するのは、ある意味仕方のないことといえそう。

 そもそも昨今“脱プラ”が強く言われだした契機は海洋マイクロプラスチックごみ問題。しかし消費者がみな回収ルートにしっかり乗せるようにすれば、消費財ルートでの海ごみ問題は起こらない。安価でありながら人々の安心・安全に貢献する使い捨てプラスチックの有用性を改めて評価してもよいはずだ。

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