社会が成熟し、人口が減り続けている日本で紙おむつは成長を続けている。生産量、消費量の増加は歓迎すべきだが、深刻化する問題もある。使用ずみ紙おむつの処理である。衛生面、地球環境保全といった観点から最適な処分方法やリサイクルシステムの構築が急がれる。
 日本衛生材料工業連合会の統計によると、2019年に国内で作られた乳幼児用紙おむつの数量は輸出を含め142億枚。17年の159億枚をピークに減少しているが、10年の86億枚から1・65倍に増大している。大人用紙おむつは右肩上がりに伸びている。10年に54億枚だった生産数量は19年には1・6倍の86億枚に拡大。高齢者の数は今後も増えるため、大人用は増加の一途となるのは必至だ。
 消費量が増大するなか、使用ずみ紙おむつ問題の解決策を見いださなければならない。し尿を吸収した紙おむつは使用前に比べ約4倍に重くなる。環境省の推計では15年度の使用ずみ紙おむつの処理量は191万~210万トンで、一般廃棄物4398万トンのうち4・3~4・8%を占める。30年度には一般廃棄物の総量は3696万トンに減少するものの、使用ずみ紙おむつの処理量は245万~261万トンに増え、割合は6・6~7・1%に上昇するとみている。
 家庭、保育所、介護老人保健施設、病院では使用ずみ紙おむつの臭いなどに苦慮。ごみ焼却場では、使用ずみ紙おむつは水分を多く含むため最初は燃えにくく、いったん燃え出すと高温になって焼却炉を傷める。助燃剤を用いるとコストがかさむといった悩みもある。
 各施設で働く人の肉体的・精神的な負担を軽減できるよう、より良い処理方法の開発や、焼却などで生じるCO2の排出量を削減するため、部材の再利用といったリサイクルシステムの確立が求められている。
 環境省は、使用ずみ紙おむつの再生利用などに関するガイドラインを作成し、検討を重ねている。国土交通省も、家庭や各施設などに分離装置を設置し、使用ずみ紙おむつから除去した汚物・汚水を下水道に流すといった仕組みを作ろうと協議している。
 企業も力を注いでいる。紙おむつメーカーは、使用ずみから取り出したパルプなどを適切に処理し、再び紙おむつに利用することを目指している。また素材メーカーでは三洋化成が、吸水した尿などを素早く取り除ける、脱水性に優れた高吸水性樹脂(SAP)を開発した。産学官一体となった取り組みで、世界に誇れる日本発の処分・リサイクルシステムが完成することを期待したい。

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