健康食品や食品添加物にかかわる消費者への正確な情報提供を目的とした取り組みが、国によって今月から始まった。内閣府食品安全員会による動画での健食を安全に選ぶための知識、消費者庁のPDFを利用した添加物の豆知識の公表である。コロナ禍による外出自粛により、インターネットや通販(オフライン)で健食を家庭で購入する機会が増えたことにともない、健康被害を訴えるケースが相次ぎ、誇大広告や虚偽表示の事例も出ている。食安委では健食に対し消費者自身で安全に摂取するためのポイントを紹介し、慎重な選択を呼び掛けている。消費者庁の簡単で分かりやすい添加物知識を含めて、安全性などについて消費者の思い違いや、あらぬ風評に惑わされないための、的確な判断が養われることを期待したい。

 食安委の公式YouTubeにアップされた「いわゆる『健康食品』について安全な選択をするため~19のメッセージ~」は、消費者の健食は健康に良いとの思い込み、誤った見方を考え直すように5つの動画に分けて紹介。過剰摂取した場合の悪影響、天然やナチュラルだからといって人工成分に比べ、すべてが安全だとは限らないこと、医薬成分含む薬機法違反品を選ばないこと、健食は健常な成人対象のものであること、ヒト対象の研究結果による明確な科学的な根拠に基づく情報を見極め選択判断すること、摂取後に体調が悪くなった際のセルフチェックを怠らないなど、消費者が過信して見落とす場面を想定してメッセージを送っている。

 一方で健食業界にとって辛めの表現もあり、閲覧した消費者がすべての健食に対し、不安を感じはしないだろうかという懸念はある。個人の体質と健食成分がうまくマッチし、健康維持に役立てば、製造販売業者、消費者双方にメリットがある。しかしマッチする条件が分かっていないのが現状である。消費者が健食を摂取し、良いと体感できる社会の実現には、体質やゲノム分析による情報、AI(人工知能)活用による生活習慣と関連付けた摂取前後の評価プラットフォームの構築など、健食業者がIT・デジタル業界とタイアップによる事業環境を整え、高度で包括的なサービスを提供することが求められる。健食とは事情の異なる添加物は、豆知識紹介を理解の導入部とすれば今後、おいしさの付与、食べやすくする役割など消費者に興味を持ってもらう仕掛け、データに基づく厳格な審議により科学的に安全だと判断され、使われていることへと、段階的にアクセプタンスを醸す取り組みへとつなげていくべきであろう。

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