新型コロナウイルスの感染拡大を背景としてビジネスマンの働き方改革が進展している。これまでも都心への一極集中を避ける取り組みがされてきたが、普及にいたらなかった。しかしコロナ禍でテレワークが加速。働く場所が分散化・多様化し、オフィスの空室率が上昇した。これにともない今後もシェアオフィスやコワーキングスペースの利用の拡大が見込まれる。


 これに関連する新たなビジネスとして、IoT(モノのインターネット)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使し、オフィスの空室管理やコロナ対策を行うビジネスに取り組む企業が増えている。センサーやネットワークを活用してセキュリティを担保したうえでソリューションとして提案するスタイルが多いようだ。


 例えば化学品商社のCBCでは、Photosynth(フォトシンス)が開発した後付け可能なクラウド型入退室管理システム「Akerun」の提案に力を入れている。2017年から同製品の取り扱いを開始し製造も受託、同社への出資も行っているという。これまでは中堅企業の小規模オフィスでの利用が中心だったが、働き方改革が進むなか、最近では大企業の工場や研究施設、オフィスなどへの採用が増加している。今後は需要拡大が見込まれる大企業の工場や研究開発施設など幅広い分野へ同システムを提案していくそうだ。「キーレス社会が進展し、コロナ禍で働き方改革がこれまで以上に加速することで同システムの需要が増える」と見込んでいる。


 一方、エレクトロニクス商社の丸文は、今年度からコロナ禍で需要拡大が見込まれるクラウドサービスを活用した空き部屋管理システムの提案を本格化した。部屋に設置したセンサーとクラウドサービスを活用して貸し部屋を管理する仕組み。音声案内と利用者のボタンデバイス操作で入室や消毒、片付けなどの行動を促し、温湿度やCO2などの環境センサーを設置することで換気などを促す。同社では、このビジネスで横展開を想定する。具体的には、ゲリラ豪雨などによるビルや工場での漏水をバッテリーレスの漏水センサーを利用して検知・監視できる「漏水監視システム」など、クラウドサービスによるシステムの用途拡大を計画している。


 コロナ禍で厳しい状況にさらされる企業も多いものの、ビジネスチャンスにつながるテーマも少なくない。緊急事態宣言の発令など、いまだ予断を許さない状況が続いているが、ニューノーマルの時代に向けて新たなビジネスが数多く創出されることを望む。

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