射出成形機などプラスチック加工機械メーカーがIoT(モノのインターネット)を使った最先端技術で顧客価値向上を支援している。米中貿易摩擦、新型コロナウイルスの世界的な蔓延を背景に市場環境が厳しさを増すなか、新サービスで生産性アップに貢献してほしい。

 日本プラスチック機械工業会によると、2019年のプラスチック加工機械の生産は前年比2ケタ減で1万5000台を割り込んだ。20年1月は967台で、1000台割れ。2月、3月は新型コロナウイルスの世界的な蔓延にともない、さらなる失速が見込まれる。

 その一方、産業機械メーカー各社は従来の製造装置の販売に止まらず、顧客の生産性改善、経営効率のアップにつながる新しい付加価値を提案している。

 住友重機械工業は射出成形機の生産品質管理システム「iコネクト」を発売している。ネットワーク接続された成形機の型締力、ピーク圧力など各種データを収集、生産管理や効率化、品質管理が可能だ。また画面表示機能をウェブサービス化し、スマートフォンやタブレット端末で、いつ誰でも生産の様子をリアルタイムで把握できる。

 日精樹脂工業は、主力の電気式射出成形機の最新機種「NEX-Vシリーズ」を開発し、IoT推進に向け新型コントローラー「タクト5」を搭載した。特徴はOPC-UA(統合アーキテクチャー)を標準搭載し、周辺機器接続用の通信規格対応を容易とした。成形機をハブに取出ロボット、金型温度調整器など一元管理に役立つ。

 芝浦機械は総合機械メーカーの知見を生かしIoTプラットフォーム「マシネット」を制定した。射出成形機、ダイカスト成形機、フィルム製造装置、ロボットなどをエッジコンピューターで結び、顧客の抱える「生産性向上」「突然の機械停止」「生産の分散」「品質安定」の4つの課題に対し、最適な方策で支援を行う。

 日本製鋼所は独自のIoTソリューション「Jワイズ」に、新しい生産管理システム「プロダクション・マネージャー」を加えた。現在の熟練作業者による生産計画ではなく、信頼性の高い実績データで管理・分析を行い、生産性と品質改善を後押しする。

 新型コロナの影響で受注状況は一段と厳しくなることが見込まれる。なかでも主力ユーザーの自動車関連の投資が冷え込むことは痛い。しかし射出成形機の市場は裾野が広いことが特徴だ。産業機械メーカーでは、幅広い業種に対し最新のIoT技術で、顧客価値の向上に取り組んでほしい。

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