美作市(岡山県)が制定を目指している「事業用発電パネル税」(PVパネル税)が、9月の定例市議会で継続審査となった。設置面積に応じ、太陽光発電事業者に課税する法定外目的税である。仮に同市での導入が決定し、他の市町村に波及すれば、今後のエネルギー問題に大きな影響を及ぼすだろう。

 提案の背景に安全性に対する懸念がある。萩原誠司市長の所信表明によると、再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)の施行以降、太陽光発電所が急増した結果、市民から「土地の形態の変化による土砂災害や洪水、鳥獣被害などの心配や売電事業終了後の土地の荒廃等を危惧」する声が挙がった。さらに「近年、各所で過去に例のないような豪雨災害が発生しており、発電施設の下流域に大きな負荷が生じ、その地域において災害が発生する恐れは、完全に否定できるものではない」とする。このためPVパネル税を創設し「下流域も含めた災害防止につながる防災対策や生活環境対策、自然環境対策など、安心安全な環境の保全のためのさまざまな施策に要する費用に充てる」と強調する。

 しかしPVパネル税は、これからのエネルギー社会に求められる地産地消の在り方を、自らの手で放棄するものではないか。資源の乏しい日本で、PVは純国産エネルギー源になり得る。太陽光発電協会(JPEA)が指摘するように、太陽光発電所は「2020年のFIT買い取り期間終了後の長期安定稼働によって、より大きな便益を地域と国民にもたらすことが可能」。FIT後の発電所を地方自治体などが運用すれば、エネルギーインフラの自主運営はもちろん、電気自動車(EV)などとの組み合わせで新たなサービスも提案できよう。この税の導入により「事業継続、並びに再投資の意欲が削がれ、長期安定稼働の妨げとなる恐れがある」と、JPEAが危機感をあらわにするのも当然だろう。

 市長の懸念も理解できる。JPEAが「太陽光発電事業の評価ガイド」を策定した18年以前は、有象無象の事業者が儲け第一でメガソーラーに参入。しかし現在、その反省の上に環境保全と健全な事業運営を目的に同ガイドの普及に力が注がれている。また今年4月、大規模な太陽光発電が環境影響評価法の対象事業に追加された。

 PVを将来のエネルギーインフラとして活用するためにも、PVパネル税の導入には断固反対だ。しかし普及促進のためには、なによりも地域との共生が不可欠。発電事業者すべて、地域社会に貢献する存在ということを肝に銘じてもらいたい。

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