円安はいつまで続くのか、いくらまで下がるのか、先の見えない状況が続いている。そうしたなかで日銀が先週14日、為替介入の準備のため市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施したことが明らかになった。米国で大幅な利上げが続くという見方が広がり一時、1ドル144円台後半まで円安ドル高に振れていたが、レートチェック実施が伝わると、円を買い戻す動きが広がった。歯止めのかからない急速な円安に対し、政府はこれまでも口先介入を繰り返してきた。円安に対して最後に為替介入したのは1998年。20年以上前だ。いよいよ伝家の宝刀を抜くのか。だが円買いドル売りは外貨準備高の制約を受けるうえ、日本だけの単独介入による効果は限定的との見方もある。介入をチラつかせるだけで終わるのか。今後の動向が注視される。
 経済同友会の櫻田謙悟代表幹事は、13日の会見で「全体的に見て、円安は日本経済にプラスになると言える状況ではない。理由は経済構造が変わったからである。これまで為替は、予見可能性が高く落ち着いていることが一番良いとされていたが、最近の経済同友会内の議論では円安がデメリットになっているという企業が明らかに多い」と述べた。化学産業においても原料の値上がりなど円安によるデメリットが発生している。
 円安が進行した発端は米国の金利上昇で、先進国の中で日本だけが金利を上げられないことが背景にある。金利を引き上げて為替が適正水準になればよいが、金利が上昇すると国債の利払い費が増えるなど、いくつかのデメリットも指摘されている。日本経済の足腰が弱っていることが根本の問題だ。
 櫻田代表幹事は「結論としては、打ち手はないので頑張るしかない。企業は生産性がどうすれば上がるかということを考えるべき」と話した。リストラや自動化により従業員数を減らして生産性を高めるよりも、研究開発や人材育成に投資し、新製品や新たなソリューションを生み出すことの方が日本経済にとってはプラスに働くだろう。21年度の日本企業の内部留保は過去最高で、これを研究開発や人材育成に振り向けることが求められている。
 日本の平均賃金はG7の中で最も低く、韓国にも抜かれた。限界消費性向は、高額所得者よりも所得が低い人ほど大きいとされる。労働経済白書が「分厚い中間層の復活に向けた課題」を取り上げたのが12年のこと。10年後の今も所得格差は広がっている。消費拡大を通じて、経済全体にもプラスになるような施策が必要ではないだろうか。

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